【審查委員】
浅田政志 (写真家)
大西みつぐ (写真家)
清水哲朗 (写真家)
若子 jet (写真家)
椙野充義 (高等学校文化連盟全国写真専門部 事務局長)
伊藤 滋 (全日本写真連盟 中部本部委員長)
山中 健次 (全日本写真連盟 関西本部委員長)
加藤丈朗 (朝日新聞東京本社 映像報道部長)
中田 徹 (朝日新聞大阪本社 映像報道部長)
※敬称略、肩書は審査当時
「全日本写真展2022」(全日本写真連盟、朝日新聞社主催、全国高等学校文化連盟後援)の審査が朝日新聞東京本社であった。「 身のまわりのくらしや風俗から経済・政治まで、独自の視点で 『いま』 を切りとる 」がテーマ。応募作品5,909点から、入賞作品106点(一般の部62点、高校生の部44点)が選ばれた。
【総評】
今回上位作品に家族の写真が複数残ったことが特徴的だった。家庭内で観察力を働かせると、何げない驚きや面白さがたくさんある。長引くコロナ禍を過ごす中で、家族との時間や関係を再考し、この時代をどう乗り越えていこうかという撮影者の気概が伝わってきた。また、一人一人が生活する地域の特色を捉えて、作品を撮っていることも印象深かった。そしてテーマの設定や色彩の調整がしっかりした作品はおのずと審査員の目に留まった。
コロナ禍も3年目となり、少しずつ外出しながら撮影ができる状況が生まれている。制限があっても自分なりの撮影スタイルを継続的に追求しよう。多くの作品から日常風景にレンズを向けて、シーンを切り取ることが写真の原点で大切なのだと改めて気づかされた。全体的に組み写真の作品が多く、単写真で上位に食い込む作品が少なかった。組み写真にするか、単写真にするかについての構成は、応募前に丁寧に振り返って熟考してほしい。
高校生は写真を通して友達との関わりを見つめたり、自由に画面を作り込んだり、バリエーションが豊富だ。しかし、コロナ禍による行動範囲の自粛や抑制的な雰囲気も感じられた。今回は、一般と同様に地域や家庭を写した写真が多く届き、友達や学校以外の社会や環境にも高校生らしい視点を向けた様子が垣間見えた。
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白いテーブルの上の幼い女の子にスポットライトが当たり、皆で祝福しているかのようだ。子供を中心にした大家族の楽しそうな表情がしっかりと写っている。コロナ禍でも家庭の中にこんな素敵なひとときがあることに引き込まれた。1枚の中に家族や人のぬくもりの大切さが凝縮されており、見る側も幸せな気持ちに満たされる。
オシラサマは東北地方の家庭や集落で祭られてきた男女一対のご神体。作品はコロナ禍でも地域で継承している民間信仰の確かさが刻まれた貴重な記録だ。中央部分が明るく、周辺が暗く沈んでおり、照明の使い方も良い。
雪の中で撮るぞという意気込みが感じられる作品。撮影者がこの祭りを深く理解して、臨んでいることが伝わってくる。現場でのカメラワークに支えられた構成も目を引く。火を囲む祭りで真ん中には行けないが、レンズの特性を生かしたフレーミングが効いている。3枚の中に祭りの神秘性がまとまった。
シンプルだが見ていて飽きることがない作品。正面、やや右向きから4枚目に向かう組み写真の構成が面白い。誰しも自分の老いを撮ることに抵抗感が出てくるが、逃げずに自らを撮った思いと最後の一枚に至るメッセージを見る側は想像させられる。フレームの揺らぎ、構図が定まらない様子も撮影者の足跡が感じられて好感が持てる。
人物が凜とした表情で作品に迫力がある。大阪の北新地で子連れ出勤するママさんが真正面に立ち、対峙して撮る度胸も素晴らしい。様々な生き方や日常の暮らしが見えることが魅力だ。構図の遠近感や街の立体感もあり、車のライトが効果的で映画のワンシーンのような世界観がある。
組み写真にしてバリエーションを見せたことが奏功した。幼い子供のしぐさが可愛らしく、特に大きなパンをかじる姿が効いている。この4枚は身近で毎日見る景色に着目して、継続的に撮影しながら作品に仕上げる好例でもある。