第19回北関東写真サロン(全日本写真連盟北関東ブロック、朝日新聞社主催)
1都6県の275人から1806点の応募があり、72点が入賞した。
審査・講評
写真家・関東本部委員 熊切大輔
■総評 街角の一コマに「今」切り撮って
茨城、栃木、群馬の3県で撮影された力作を拝見してあらためて、まだ見ぬフォトジェニックな景色や瞬間、祭りなどが我々の身の回りにたくさんあるのだなとつくづく感じさせられました。そんな昔ながらの、または新たな魅力を切り撮り、写し出してくれるのが写真の力だと思います。
今回の皆様の応募作を見ると有名な撮影スポットや祭りを捉えたものも多くありましたが、一方身近な出来事や人、風景を写し出したものも目立っていました。写真映えする画を求めて海外など様々な場所に赴くのも楽しいものですが、日常をどうすれば楽しく写しだせるか、あたりまえの風景をどうすればドラマチックにかえられるか、足元を観察し頭をひねるのも楽しいものです。このような地元に特化したコンテストを通じて、あらためて皆様の地元を見直し、自分なりの撮影スポットやスーパーモデルを発見していただくのも楽しみの一つにして頂ければと思います。
時代は新時代「令和」となりました。写真はその時代を写す貴重なアーカイブとなります。それが何げない街の一コマのような写真でもそこには確実に「時代」が写っています。これからも様々な皆さんにとっての「今」を切り撮り続けて頂ければと思っております。
迫りくる激しい夕立を予感させる荒々しい積乱雲の前でやや不安げな表情の少女。記念写真にせずナチュラルな表情を捉えることで、夏休みの記憶に残る一日、といった自然なストーリーを生み出すことができたのではないでしょうか。
々しく打ち寄せる波の力強いディテールが見事に写し出されています。そこには海に突き出るように祀られる鳥居が。まさに襲いかかるように覆いかぶさって殆どが隠れてしまっていますが、それが作品の迫力を増す形となりました。
小さな夕方の駅での何気ない日常。そこにもちょっとしたドラマは起こるものです。携帯電話が全盛の中、公衆電話から連絡を取る人。夕暮れに映える赤い電車。まるで映画の一コマを見るような様々なドラマを想像させてくれます。
獅子舞には子供が元気に育つように甘噛してもらいますが多くの子供はむしろ恐怖を感じ、泣くシーンをよく見かけます。人一倍大きな獅子舞の顔に恐怖そのものの表情を見せた瞬間を見事にタイミングよく捉えることができました。
この手法は珍しくはありませんが、こればかりは急に作品を作るわけにはいきません。長年撮り続けることが大事になります。更に重要なのは被写体の表情。撮る人撮られる人互いの愛情を写真の中から最高の笑顔で伝えてくれています。
アフリカか、と見紛う壮大な景色を撮影することができました。静かな池と鳥たちのシルエット。シンプルですがいつまでも見ていたくなる情景です。本当に良い瞬間に巡り合った時には余計なものはいらない、と強く感じる作品です。
祭りの一コマ。激しく暴れる馬と必死に食らいつく乗り手。それぞれの表情もさることながら周りの人々も生き生きとした表情が写し出されています。ピントを外しやすい被写体ですが、しっかりと動きを止めて撮ることができました。
気球は非常にフォトジェニックな被写体ですが、ストレートに撮ってしまうと説明的なものになってしまいがちです。本作は逆光の光線をうまく使い、ローキーに撮影してシルエットの面白みをうまく引き出すことができました。
実際は竹林に乱立する竹はどれを撮ってもあまり変化がないかもしれません。しかし本作はそのうちの2本に目をつけて夫婦に見立てました。同じような曲線を描きながら高く伸びる2本は寄り添う夫婦の人生にも見えたのでしょうか。
公園のなかのオブジェでしょうか?その中から見た園内の景色は霧に包まれ幻想的です。オブジェの曲線が溜まった水との相性がよく、なんとも言えない「額縁」を作り出しました。おかげで霧景色を絵画的に表現する事が出来ました。