【審查委員】
浅田政志 (写真家)
大西みつぐ (写真家)
清水哲朗 (写真家)
若子 jet (写真家)
江連康晴 (全日本写真連盟関東本部委員長)
澤山陽一 (全国高等学校文化連盟写真専門部会長)
大野明 (朝日新聞東京本社映像報道部長)
石合力 (同大阪本社編集局長補佐兼大阪本社映像報道部長)
勝又ひろし (全日本写真連盟総本部事務局長)
※肩書は審査当時
「全日本写真展2021」(全日本写真連盟、朝日新聞社主催、全国高等学校文化連盟後援)の審査が朝日新聞東京本社であった。「身のまわりのくらしや風俗から経済・政治まで、独自の視点で『いま』を切りとる」がテーマ。応募作品5347点から、入賞作品97点(一般の部63点、高校生の部34点)が選ばれた。(敬称略)
【総評】
昨年から続くコロナ禍で、誰もが困難な状況にいる。それでも、今年は撮る側も見る側も、少しだけ緊張感をほどいて日常を見渡しながらできることを探し求めており、視点に変化が生まれている。
応募作品一つ一つから、撮影者がいかにコロナ禍の今を生き、どう過ごしてきたかが感じられ、撮ることで希望を見つけるような、一歩前へと進むような瞬間に出会えた。外出への制約が多く、日常を撮るスタンスが持続している時代ゆえ、マスクに絡む作品が数多く届いた。一方で、水害など自然災害にも目を向けようとする思いが詰まった写真も見受けられた。
一枚で表現する写真が持つインパクトや表現力も際立った。複数の写真を組み合わせた表現は大変難しい。ひとつ間違えると台無しになるので、作品選択はより慎重になってほしい。
高校生の部の作品から新たな挑戦が感じられた。コロナ禍での気持ちの持ち方や自由な解釈は力強く、写真を見ていて元気づけられた。
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赤ちゃんとパパだけが写っているシンプルな作品。子どもと命という今も昔も変わらない一番輝く存在に、おばあちゃんがカメラを向けた様子はほほえましい。身近な人が被写体だが、他人が見ても胸に迫る写真だ。人のぬくもりをちゃんと感じていたいこの時期に、しっかりと体温が伝わってきた。
限られた環境の中で日々の楽しみをどう見いだすか、コロナ禍の状況をリアルタイムに写しだしている。タテ位置で撮影することにより余計な情報が省かれ、場の雰囲気や会話が聞こえてきそうだ。作り込みではなく、現実を強調しすぎないところに好感がもてる作品だ。
ストーリーを慎重に考え、4枚に組み立てたのだろう。ラストの通行止めを写した1枚が、果てのない災害、先行きの不透明感、人間の営みのもろさが続いていくことを暗示するようだ。暗く重い現実でも、徹底的に記録し見せていく作品だ。
コロナ禍の時代性を感じさせながら、大変な時を楽しんでいこうとする表現は新鮮だ。少し皮肉交じりのソーシャルディスタンス。被写体となった人物が手にする道具や背景がすっきりしており、嫌みのない仕上がりはよくできている。徹底的に工夫した見せ方は素晴らしい。