審查委員
浅田政志 (写真家)
清水哲朗(写真家)
百々 新 (写真家)
若子 jet(写真家)
澤山陽一(高等学校文化連盟写真専門部長)
山中健次(全日本写真連盟関西本部委員長)
伊藤滋(同中部本部委員長)
大野明(朝日新聞東京本社映像報道部長)
浅野哲司(同大阪本社映像報道部長)
伏見美雪(アサヒカメラ編集長)
【総評】
平成から令和に変わるという、本展のテーマに沿った作品を撮る絶好の時期であったのに、改元を描写した優れた写真がなかったのが本当に残念だ。単に「令和」という看板が写っているだけでは分かりやすすぎる。みなさん普段自分が撮られている分野、テリトリーから踏み出しておらず、内向きになっている印象だ。もっと自由さ、チャレンジングスピリットがほしい。そういう作品が出せるのが本展の魅力なのだから。
デジタルになったばかりは不安定だったプリントのクオリティが上がってきた。フィルム時代の印画紙よりも用紙の選択の幅が広がり、技術も向上してきた。いっぽうタイトルに工夫がほしいのと、組写真の組み方に構成力を磨いてほしいのは長年の課題だ。
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いったいどういう場面なのか分からない面白さがある。タイトルや防護服のような格好から、3・11や豚コレラなどを想像してしまう。実際は愛知県・佐久島の民家の黒壁を保存するためにボランティアが黒ペンキを塗っている場面だが、この一枚で色々な物語、それも現代の問題を想像できるのがいい。
一枚だと分かりにくいが、組んだことで力を持ってくる作品だ。何でもダメだと言われる時代に、こんなに自由に子どもの夢をそのままやらせてあげる家庭があるんだと、ホッとするような写真だ。おじいちゃんが孫を撮っているが、一家勢揃いの写真もあって、よくバリエーションを考えている。
特別な出来事に視点を向けていない日常性に立ち返った写真で、祭りなどのイベントを撮った作品が多い中で、逆に目立っている。アマチュアの多くからすると分かりにくい写真かも知れないが、シンプルなアプローチが被写体との関係性を見るものに想像させる。
タイトルを見なかったら普通の街頭スナップにしか見えないくらい、さりげなく奧に観覧車を配し、最後に種明かしをするような展開が面白い。街並みや人々の暮らしを非常によく観察していて、すべての写真のシャッターチャンスがすばらしい。
造形的に美しい写真だ。屋根のシルバーの劣化した枠、しわだらけの背中、標識、青い空などがそれぞれ相乗効果にもたらして写真を引き立てている。写真のイメージはスタイリッシュなのだが、写っているディテールは古ぼけていて、その情報の消し方が上手だ。