審査 関東本部委員 畑上稔生
信玄公祭りでは出陣式・武者行列・パフォーマンス・祭り周辺のスナップなど自由に撮影を楽しんだ作品が寄せられて楽しく拝見しました。秋の昇仙峡では紅葉と岩と渓谷美が季節の中で輝く様をどう表現するか試行錯誤しながら風景撮影を楽しんでいる姿を想像することが出来ました。祭りと風景、舞台は違ってもそこに何を発見し感動をどう表現するのかは撮影にあたっての共通する課題ですね。
信玄公祭りではテーマ性が曖昧でついつい雰囲気で撮さられてしまった作品や、昇仙峡ではプリント作業が粗末なため惜しくも入選を逃した作品も散見されました。ご自分の作品を改めてもう一度客観的な目で見つめ直すこともステップアップのために大切な作業ではないかと思います。
観る人を作品の世界に誘い込むインパクトやそのための仕掛けも必要です。自分なりの発見や独自の感性で捉えた世界を一枚のプリントに仕上げるという写真表現の醍醐味は画家や芸術家と同じで、終着駅のない列車に乗ったようなものではないでしょうか。途中下車するつもりでコンテストに応募して自分の到達点を試してみるのも楽しいですね。更なる撮影意慾が湧いたら撮影機材やプリンターの手入れを怠らず、マイペースで撮影に出かけましょう。
*<推薦>「カリスマ放出」太滝日録さんの作品は、権利上の都合によりフォトアサヒ3-4月号の掲載のみとなります。
巨大な花崗岩による自然のアーチが画中額縁となって圧倒的な存在感があります。渓谷と奇岩が形成した空間を舞台に秋の行楽を楽しむ二人の姿が微笑ましい。人物との対比で岩の大きさが強調されて、風景の中に巧みにスナップ写真の手法を取り入れた機転が素晴らしい作品を生み出しました。
連続する急峻な岩山が産み出す独特の景観を、水墨画のような風景として見せている。霧が深い谷を被って幽玄な世界を出現し、手前の岩と赤松がいかにも絵画的だ。流れる霧の中で刻々と変化する岩の見え隠れを楽しむ作者の心が伝わります。