審査 理事・関東本部委員長 江連康晴
【総評】
今回の福島県主催「支部対抗写真コンテスト」(課題が水のある風景)に、応募者数72名、応募作品数345点が集まりました。日常目にする自然風景や生活にかかわる水を課題としたことで、年中行事のイベントや生活に密着した神事等いろいろな視点から水をとらえた作品が多く出されていました。課題を与えることでその関わりを見つける視点と、どう作品化しようかとする表現力が身につくはずです。毎回課題を出すことで各会員の写真力が上がってきています。ものの見方、考え方の幅が広がってきています。とてもいいことです。これからも引き続き写真ライフを楽しんでいただき、次回の力作を期待しています。
2/3を占める下側部分が雨上がりの水たまりに映し出され、鯉のぼりと桜堤の花びらが散らばり、青空まで写っています。印象的です。護岸のデザイン的なコンクリーブロックの並ぶ方向が上の方へとつながり、全体的に放射状になって川にかかる橋へと視線誘導されていきます。奥行き感と広がり感を醸し出しています。尚且つ下側の斜めに映し出されている鯉のぼりがこの場の状況を引き締めています。
東日本大震災が13年もたちました。毎年慰霊祭が行われています。この作品もその時のものなのかわかりませんが花を一輪、一輪と心に込めて砂浜に並べ置いていく姿に心を打たれます。写真は記録であり、記憶を見る側によみがえらせます。見る人によって心痛な気持ちにもなると思いますが、亡き人の思慕の念の心情写真として評価します。
子供たちが遊びまくる公園の中の噴水でしょうか。いきなり水しぶきを上げて水が吹き上がり、その水をかぶって逃げ惑う様子が伺えます。子供の楽しそうなしぐさの表情をうまくとらえた決定的瞬間です。水のはじける形も適正なシャッタースピードで功を奏しています。はじける水とはじける笑顔、素晴らしいです。
どこか映画のワンシーンの様な、おとぎ話にでも出てきそうな夕暮れの映像風景が目を引きました。上下、二分割の構図と水田にリフレクションとしての映り込みがとても美しく、祠の中の光が印象深く映し出されていてとてもいいです。
氷の造形はよく見かけますが、何となく怪獣の爪のような錯覚に見えてしまいます。一種のパレイドリア現象(そこにないもの、本来では異なるものを、脳の知っているパターンに当てはめて錯覚してしまう現象)としての効果をこの作品は醸し出されています。美しくも迫力のある造形作品となりました。
同じ様な女性二人が海から上がってきます。その状況からして今日もいい波に乗れたねと楽しく満足感に浸っているかのようです。とてもフレッシュでさわやかな雰囲気感があふれ出ています。海との戯れがにじみ出ている作品です。