審査 総本部事務局長 久松弘樹
総評
今回も、新潟県の春夏秋冬、それぞれの季節で見られる人々の暮らしや、豊かな自然を捉えた作品が多く出展されました。雪深い厳しい冬の季節の中でも、その場所で暮らす方々の人情や、郷土愛が伝わる場面や表情をとらえた作品が多い印象を持ちました。
新潟県は、棚田や広大な田園、美しい海岸線など、誰もが撮りたくなる風景が多いところです。今回入選された皆さんの作品を拝見すると、単にその場所に行ってシャッターを押すというだけでなく、撮影された方が、どういった作品に仕上げたいかを、撮影前に構図をイメージし、どの季節にどの時間に撮影をするのかを、計算されたことで仕上がった作品が目立ちました。
プリントの仕上がりも、曲がりを直し水平が保たれ、安心した構図で鑑賞できる作品が多く、新潟県本部の会員の皆さんのレベルの高さを感じました。
降り積もった雪の中を托鉢するお坊さんを捉えたもので、黒い着物と背景に対し、白い雪と赤い菅笠が強烈な印象を残す作品です。シンプルな色構成にまとめたことで、静寂な雪景色の中、お坊さんの読経と雪を踏む音だけが響く、映画のワンシーンのように表現されています。登場人物が僧侶だけだったら端正な写真だけで終わるところ、背後に映る女性の柔らかい表情が、「お気をつけて」と気遣う気持ち伝わり、写真にぬくもりも添えています。
支部のお仲間の、米寿を祝う会での一コマ。楽しい時間を終え、皆がアーチで作った花道を、花束を抱えて進む場面で、作品を見る側も拍手して「おめでとう」と声をかけているような温かい作品です。左右対称に連なるアーチが、視点を画面中央に集中させ、ご長寿の少し照れたお顔がより引き立ちました。アーチを作った皆さんの表情は見えませんが、垣間見える白髪に、長く一緒に写真を楽しんできたお仲間の友情も感じます。
まだ雪が残る場所に干された洗濯物を捉えた作品です。人は写っていませんが、雪深い長い冬が過ぎ春の暖かさを迎え、この場所に暮らす方々の、ささやかな喜びを感じさせます。波のように奥まで連なる雪原の中から、「春が来たよ」とそれぞれの洗濯物が、ひょっこり顔を出したようなユーモラスさもあります。作者は、桜を撮りに行った帰りに偶然見つけた場面だそうです。桜のタイミングはまだだったそうですが、あきらめず目をこらしたことで、この場面に出会えました。
新潟の棚田の風景は、全国的にも有名で、春先、田植え前に水をたたえた棚田は、一面に鏡がちりばめられたようで、誰もが撮影したくなる景色です。しかも朝霧がかかり、オレンジ色に輝く風景は、なかなか出会えません。作者は、この風景を撮影して終わりではなく、居合わせた人を、あえて外さずに写し込みました。シルエットが棚田に合わせ鏡のように映り込み、画面上下が、まったく異なる世界になり、より印象的な作品となりました。