朝日新聞社が1983年に行った「21世紀に残したい日本の自然100選」を記念して始まったこの写真コンテストは、今年で38回を迎えます。「いつまでも守り続けたい日本の自然」をテーマに、プリント作品が対象となる[プリント部門]では、5,375点の応募の中から「最優秀賞」を含む59点が選ばれました。またウェブ応募の[デジタル部門]では、8,492点の応募作品の中から、「最優秀賞 ソニー4K賞」と30歳以下の応募者を対象にした「ソニーネクストフォトグラファー賞」を含む37点が選ばれました。風景や動植物、人間の営みなどをストレートに表現した作品を通じて、日本の自然の素晴らしさを再発見していただければ幸いです。
【審査員】
海野 和男 (写真家)
高砂 淳二 (写真家)
福田 健太郎 (写真家)
前川 貴行 (写真家)
米 美知子 (写真家)
大野 明 (朝日新聞東京本社映像報道部長)
坂本 修 (森林文化協会常務理事)
小林 修 (朝日新聞出版写真部長)
勝又 ひろし (全日本写真連盟総本部事務局長)
主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会
協賛:ソニーマーケティング株式会社
【プリント部門総評】
自然の中で被写体と向き合い、真摯な気持ちで撮っている様子が作品全体から伝わってきた。心ひかれる生き物や風景にこだわり、機材や撮影時間などを突き詰めて撮った写真は、訴える力が強く印象的だ。しかし、定番の撮影地や人気の動物の写真は、既視感が拭えず最終審査に残ることは難しい。上位は、驚きや工夫、努力が抜きんでた作品が占めた。
今回もコロナ禍にもかかわらず、応募数が増えて多様性に富んだ多くの作品が集まった。一方で、彩度の調整やトリミングなどが気になるプリントも目に付いた。自然を写真作品として表現する時、撮影データに手を入れることを前提とせずに、自然に撮って自然に仕上げるという意識が重要になってくる。
近所の草むらなどの小さな風景や静寂の森林、樹木を撮った作品の応募が少なく残念だ。ぜひ、一見地味な自然にも目を向けて、シンプルに撮るチャレンジも続けていって欲しい。
ソニーマーケティング「日本の自然」写真コンテストページ
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海水面に霧が発生する気嵐(けあらし)が現れた寒い冬の朝、黄金色の海と連続する波を楽しむたった一人のサーファーが絶妙な風景を作り出した。壮大な地球と波の力、スケール感にも圧倒される。自然との対話、そこに生きる人間の存在感も引き立っている。
夜間潜水し、水中でイカの赤ちゃんを捉えた作品。浮遊しながらピントを合わせるのは相当難しいはずだ。ライティングとアングルは完璧で、イカの動きや透明感が素直な驚きをもたらした。撮影者のチャレンジが結実した作品だ。
模様の美しさ、形と色、人の暮らしも融合した写真。遠めから写すことで畑の文様がデザイン画のようにも見えてくる。青いトラックが手前にあることで画面が引き締まった。人の営みも自然の一部と捉えて、命や食にまで想像が膨らむ風景だ。