「いつまでも守り続けたい日本の自然」をテーマに、37回を迎えた「日本の自然」写真コンテストの
審査結果を発表します。
審査員
中村 征夫 (写真家)
福田健太郎(写真家)
前川 貴行 (写真家)
吉野 信 (写真家)
米 美知子 (写真家)
立川 洋一 (森林文化協会事務局長)
大野 明 (朝日新聞東京本社映像報道部長)
伏見 美雪 (アサヒカメラ編集長)
主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会
協賛:ソニーマーケティング株式会社
【プリント部門総評】
四季の移ろいを、どの作品もとても美しく捉えている。一瞬で消えゆく自然の妙を逃さず撮るために、相当学び、何度も撮影に通ったのではないだろうか。最終審査には、撮影者の工夫や努力の痕跡が残る写真が入った。
全体的には、風景や里山、行事などを撮った作品より、生き物、特に野鳥が多い印象だ。野鳥は、自然の被写体の中でも撮りやすい分野なのだろう。しかしながら、撮影者に求められているのは、模倣や追随ではなく、独創性である。自然や人々の暮らしと向き合い、自らの視点を表現する技量が試されている。
撮影者の意図を表現するためには、一枚一枚のプリントの仕上がりが重要だ。一層のこだわりを持って取り組んで欲しい。
人々の営みと関わる写真が少なかったことは気がかり。人を撮るのが難しい時代だが、まだ見ぬ風景、まだ見ぬ世界が必ずあるはずだ。ぜひ自らの足を動かし、感性を研ぎ澄まして、やっと出会える心躍る瞬間を探してみよう。
福田健太郎さんによる講評動画
ソニーマーケティング「日本の自然」写真コンテストページ
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地球の鼓動を感じる。阿蘇山の噴煙を、無風の絶妙なタイミングで撮っている。好機と努力が合わさった作品。手前の池には、星も映り込み、草千里の馬の姿や垂直に上がる噴煙がとても印象深い。美しい構図に、はっとする。同時に、自然の脅威や怖さも、見る人たちに伝える一枚だ。
2組のイルカの親子がほほえましい。このようにそろった写真はなかなか撮れない。仲間たちが、後ろに写り込んでいて、奥行きが感じられ、海の雄大さが伝わる。水面は波立ち、潜ったり、船上に上がったりの繰り返しで、重労働の撮影だと思われるが、爽やかな雰囲気がある。明るめの露出も適当だ。
アルビノのエゾリスが、妖精のように雪の上を走り回っている。可愛らしい様子を追いかけて一瞬を撮った。色彩的に見て、とてもきれいな作品。差し込む光がきらめき、背景はすっきりとしている。動きのある姿を捉えたところが良い。
富士山の周辺に咲くフジアザミの存在感にひかれる。背景には、霧に包まれた森と岩が見えており、独特の生息環境を、ローアングルからうまく表現した。純粋な自然写真で、色合いもシンプル。見たままの自然を表現したところに、好感がもてる。
つららから垂れる水を、シマエナガがなめている。シーンの面白さと、一生懸命羽ばたく姿が、とても魅力的だ。ありふれたシマエナガの写真とは違い、鳥の形が目をひき、躍動感が伝わってくる。撮影者の歓声が聞こえてくるようだ。
稲を天日干ししている杭が倒れ、崩れ、田んぼには水もたまっている。整然としていないのに、ひかれる風景だ。台風一過の朝、霧の中に朝日が柔らかく差し込んで、新しい日が始まっている。古代からの人々の営みがここにある。