「いつまでも守り続けたい日本の自然」をテーマに、35回を迎えた「日本の自然」写真コンテストの審査結果を発表します。
審査員(写真家)
中村征夫、福田健太郎、前川貴行、吉野信、米美知子
沖浩(森林文化協会常務理事)、大野明(朝日新聞東京本社映像報道部長)、浅野哲治(同大阪本社映像報道部長)、佐々木広人(アサヒカメラ編集長)
主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会
協賛:ソニーマーケティング株式会社
【プリント部門総評】
歴史あるコンテストなので、みなさんが高い意識をもって応募しているのがわかる。地元にじっくり腰を据えて愛する郷土の写真を撮る人、それを全国に伝えようという意識が感じられる人、未知の場所に足を延ばして新たな撮影を試みている人。いずれも取り組み方が素晴らしい。
残念なのは、いい被写体、瞬間に立ち会っていながら、主題があいまいな作品が目についたことだ。上位の作品は何を撮りたいのかがよく伝わってくる。また、プリントのクオリティーが原因で入賞を逃したものも少なくなかった。明らかな合成写真があり、過剰な後処理、色処理で損をしている作品も多かった。被写体は動物、特に鳥が多い傾向が続いており、次回は風景作品の応募をもっと期待したい。
ソニーマーケティング「日本の自然」写真コンテストページ
巡回展のお知らせ
作品集販売のお知らせ
ナキウサギの写真はよく見られるが、餌をくわえてジャンプしている姿を正面から捉えたものは珍しい。素晴らしいシャッターチャンスをものにした。ナキウサギの行動をよく観察し、通るコースを定めてカメラを構えた。まさに観察眼の勝利だ。
西表島のマングローブを捉えた水中写真だが、河口域の水はふだん濁っているので、時間と場所をしっかり選ばないと撮れない。光が水にどのように入ってくるのかと、その光を浴びながらマングローブの気根が育っていく様子がよくわかる美しい写真だ。
「静かにささやく」という印象の写真だ。今はもうほとんど使わなくなった稲を干すハサ木だが、消えていく農文化の象徴ともいえる。冷たく静かな大地と天がそれに呼応しているようにも感じる。リアルだが、幻想的な世界に我々を誘っている。
日本はとてもカラフルな国で、チョウもその立役者だ。この作品は、はっきりとしたコントラストで、画面にアサギマダラが美しく、バランスよくちりばめられている。また周辺部の光を落とし、チョウのもつ独特の色味を印象的なものにしている。
ヤマドリに出合うことは大変難しい。いいチャンスに巡り合えた。縄張りを誇示するための雄たけびを上げる瞬間をうまく捉えている。色彩にも品格がある。暗いところで動きの速いヤマドリをしっかり写し止めたのは観察力のたまものだ。
飛沫氷は十和田湖などが有名だが、これは琵琶湖だ。朝日に照らされ、自然が素晴らしい造形美を作り出した。的確なシャッタースピードで飛沫が舞った瞬間と氷ができる過程を写し、凝縮された構図だ。動と静をしっかり捉えている。
人気撮影スポットだが、この場所で撮れる一番いい光線状態の写真ではないか。登場人物、犬が絶妙な動きをとり、余計なものが写らず、この写真の重要な要素である白い息がきっちりと写っている。人と自然の関わり、触れ合いを見事に表現している。
佐渡で飼育されているトキ。一度は絶滅した鳥がこれだけ集まっている光景は現地では珍しくないのかもしれないが、写真として改めて見ると感無量だ。ここまで繁殖できる自然環境を整えたことも素晴らしい。ここには写っていない水田風景を想像したくなる。