全日本写真連盟

「あんた感性いいからね、と言われます」/国際写真サロンに二度入選の二位岡野さん(86)

この方には写真の神様がついているのか、はたまた、このお方ご自身が、写真の神様なのか――。
兵庫県豊岡市の二位岡野さん、86歳。いっぷうかわったお名前で、姓が「にい」、名が「おかの」とお読みする。世界中から9000点を超す応募があった昨年の第73回国際写真サロンで「野点」が入選。受賞者のなかで最高齢、しかも二度目の受賞である。過去に「日本の自然」にも入選している。

第73回国際写真サロン表彰式で田沼会長から入賞メダルを授与される二位岡野さん

「ああ、そうそう、80歳の時に全日本女性写真展で金賞をもらいました。授賞式に行ったら、挨拶せいと言われて、『80歳でやっと金賞もらいました』と話したら、すごい拍手をもらって、びっくり。それまで、自分では歳を考えんやったんですが、みんな私の歳に驚いたんですね」
撮影のコツがあれば教えていただけませんか?
「さあさあ何があるんだろう……あんまり意識しないなあ。何にも考えずに何でもかんでも、あるもの撮っているんです」
どこかで写真の勉強をなさったんですか?
「勉強?何にもしていない、何にも知らない。カメラが撮ってくれるからね。ずっと仕事ばっかりしてきた。無知だからねえ、それでも周りの人からは、『あんた感性いいからね』」と言われます」
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第73回国際写真サロン入賞の「野点」

他人事(ひとごと)のように淡々と振り返る人生は、氾濫万丈である。苦労を含めて、その脳裏に焼き付いた様々な体験が、多種多様な価値と文化を引き受けて魅力を増す写真作品に投影されるのかもしれない。
「19歳の時に百姓に嫁ぎました。主人が養鶏を始めて、20年ほどして大失敗して借金地獄。ニューカッスル病で鶏が全滅したのです。その後はおでん屋したり、ようけ借金してキャバレーを始めたり」
キャバレーですか?
「そう、全員フィリピンの人たちで、昔はよう流行ってね。一晩、百人も入りました。40年以上経ちますかね、店は今も続けていますよ、経理は私がしています。地元に嫁いだ子もいて、ここに来ますよ」
写真より先に、俳句との出会いがあった。
「50いくつかの時に、伊丹三樹彦先生(※印)にお会いして俳句を始めました。先生は写真もしていて、60歳の頃だったかなあ、みんなで『写俳ツアー』に行くというので参加したら、写真がやみつきなりました。インドは被写体がいっぱいあって、嬉しくて楽しくてたくさん撮ってきた。その頃に知人の全日写連の人から『入ってきなはれ、入ってきなはれ』と何度も誘われて入会しました」
月例会には毎回、5点出している。「ネイチャーも、入れ入れと誘われて」、別の写真クラブにも属している。海外の撮影旅行はインドの後もカンボジア、マダガスカルと世界中に足をのばしてきたが、とりあえず一昨年で止めにして、最近は地元を撮る機会が多くなったという。

1991年入賞の「ベンチ老人」

「豊岡は撮影の宝庫ですよ。コウノトリの里ですし、海も山もお城もある。今は毎日は撮りに行ってません。暑いもん。去年から車もやめました。やめたらあんまり行けない。だけど、連れていってくれる人がいるのでね。そう、5月の11日にコウノトリを撮りに行って、ヘビを自分で取っているのを初めて撮りましたよ。300ミリのレンズで、もっと大きいのがあるといいけれど、何とか間に合わせて。山の上から巣を狙ってね。三脚持って山には上がれないし、足場も悪くて大変でしたが、いい写真が撮れました」、
これから、どんな写真を撮っていきますか?
「さっき話したように、ここには被写体がいっぱいあるので、何でもかんでも、あんまり意識しないでね。まあ、体が丈夫なのでね。お医者に行ったことないし、これまで病院の薬も飲んだことないんです」
(※伊丹三樹彦~1920年生まれ。兵庫県伊丹市出身。俳人、写真家。写真と俳句の相乗による「写俳」運動を創始。現代俳句協会顧問、2003年度現代俳句大賞受賞 出典:ウィキペディア)

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2022/08/01
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