全日本写真連盟

第21回北関東写真サロン結果発表

審査 写真家・関東本部委員 鈴木一雄

【総評】
 昨年は新型コロナ渦の影響で撮影も十分にできず、今回の応募点数はかなり減るのではないかと危惧していました。ところが、応募点数では前回をわずかに上回ったと知り、審査員として本当にうれしく思いました。何よりも、写真に対する強い思いと、このフォトコンテストを楽しみにしているたくさんの熱意が伝わってきました。
 “写真”が愛好者の一人ひとりにとってどれほど重要で、どれほど生きがいになっているのか、そのことが問われる世の中になってきたと思います。写真というものが、新型コロナ渦における閉塞的な、忍耐的な生活を乗り切るエネルギーになりうるかが試されているといってもよいでしょう。私自身も、被写体に対峙する喜びとシャッターを切れることの感動を忘れずに、何とかこのつらい日々を乗り切っていきたい、そして、少しでも人の手助けになれればという思いを高めているところです。
さて、今回の審査結果を振り返りますと、たいへんに充実した内容でした。入賞作品をご覧になってもお分かりになるように、見事なシャッターチャンスをとらえていたり、素晴らしい撮影技術で表現したり、新鮮な視線で描いたりと、その努力と感性に敬意を表します。とりわけ、最優秀賞の岡田さんの作品をはじめとする上位作品には、それらの感動が凝縮されているといえます。また、それ以外の入選作品も、じっくりと鑑賞していただきたいと思います。みなさんのさらなる奮闘を期待します。

 最優秀賞「雷雲迫る」 岡田 康一(茨城県つくばみらい市)

一次審査の時から、作品を手にした瞬間に強烈なインパクトを放っていました。雄大なスケール感、自然現象の躍動感、大空を舞台とする生命のチカラ、そして絶妙な光線状態すべてが、奇跡的にもこの画面にまとまって描かれています。狙ってとらえられるものではなく、出会えただけでもこのように描けるものでもありません。強運と瞬発力、そして技術が連動して描けた作品です。雷雲を背景に大空を舞うシラサギに、感動です。

 栃木県知事賞「夢の中」 小林 トミ子(栃木県宇都宮市)

すやすやと眠っている幸せそうな赤ちゃんの背景が、炎と煙になっています。一瞬、ドキッとさせられる作品ですが、鑑賞者の想像を掻き立てる内容になりました。農作業の人が赤ちゃんを畦に置いている状況ではないことは、おしゃれな服装が証明しています。結局、野焼きを見物に来た方の赤ちゃんということですが、他の要素を捨象したことが正解でした。その結果、ミステリアスな内容を孕みながら作品の力強さを生み出しました。

 茨城県知事賞「夜明けのステージ」 武井 千鶴子(茨城県つくばみらい市)

 これが現実の風景写真であろうかと思わせるほど、まるで絵画のような世界観です。露出をアンダーにコントロールしながら、焼けている空の赤とわずかな氷部分の輝きで、独特の光景を描きました。画面の大半が黒くつぶれているにもかかわらず、雄大なスケール感が宿っています。その決め手となったのが、水たまりにいる三羽のサギです。よくぞ、三羽三様の姿をとらえました。太陽部分を大胆に半分で切っているのが見事でした。

 群馬県知事賞「初夏を飾る」 鈴木 正美(群馬県前橋市)

 山を登っている時にこのような光景に出会えたら、疲れが一気に吹き飛んでしまうでしょう。鮮やかに咲き誇るミヤマヤエムラサキとブナの巨木がコンビを組んで、見事な初夏の爽快感を奏でています。センチ単位のカメラ位置の調整とレンズの焦点距離の選択を上手に組み合わせてこそ成しえた画面構成、フレーミングです。花の最盛期というシャッターチャンスだけではなく、作者の卓越した技量がなければ生まれない作品です。

 優秀賞(朝日新聞社賞)「夏の記憶」 増田 智恵(茨城県牛久市)

 今回の応募作品の中には、作者の感性を活かした創作作品が少なからずありましたが、その中で最も上位に推挙されたのがこの「夏の記憶」でした。まず、被写体としての素材が良かったですね。海辺などの代表的な夏のシーンではなく、何気ない背景の街角のスナップをとらえたのが功を奏しました。そして、それを不思議な模様の透かし絵を重ねたことで、すてきな心象風景が生まれました。新鮮な感覚を評価しました。

 優秀賞(全日本写真連盟賞)「泳ぐ」 佐海 忠夫(栃木県真岡市)

 手染めの鯉のぼりは、川の水にさらして糊を落とすという工程があるそうですが、これがそうでしょうか。水路に大きな鯉のぼりが横たわって、こちらに迫ってきます。その上の青空には、横一列になって鯉のぼりの集団が風に吹かれて泳いでいます。この対比があってこそ、作品の味わいが深まりました。もちろん、カメラ位置といい、遠近感の出し方といい、広角レンズの使い方が秀逸だったことが、賞を勝ち得た大きな要素でした。

 優秀賞(関東本部長賞)「仲よし」 河井 貞男(栃木県矢板市)

画面構成も、色彩も、そして光線もたいへんにシンプルながら、印象深い作品に仕上がりました。色彩は、黒バックに浮き上がっている熟した柿と二羽のサギだけというすっきりしたもので、視覚的に印象に残ります。何よりも、残り柿の上に止まっているアオサギとシラサギがあたかも見つめ合っているように見え、物語性が宿りました。光線状況との組み合わせを考えると、たいへん貴重なシャッターチャンスを捉えた努力も評価されます。

 特選「ととろの冒険」 荒井 千代子(栃木県宇都宮市)

 特選「雪化粧」 大塚 芳彦(栃木県芳賀郡芳賀町)

 特選「捕獲」 佐藤 邦夫(茨城県那珂郡東海村)

 特選「邪気を払う」 長沢 栄子(茨城県牛久市)

 特選「朝陽に向って」 河原﨑 久登(埼玉県加須市)

 準特選

「子育て」 鈴木 克彦(栃木県宇都宮市)

「二人雛」 塙 寛(栃木県宇都宮市)

「馴れぬ路」 穴原 志朗(栃木県足利市)

「霜晨の沼」 内田 隆(栃木県矢板市)

「朝行」 志賀 実(栃木県矢板市)

「龍雲現る」 黒崎 修一(栃木県芳賀郡芳賀町)

「往時を走る」 菊池 保(茨城県水戸市)

「ちびっ子電車」 古田 輝子(茨城県水戸市)

「朝凪」 深作 正一(茨城県東茨城郡大洗町)

「緑のトンネル」 田村 富子(群馬県伊勢崎市)

 秀作

「俺は栃木のプレスリー」 大岡 博美(栃木県宇都宮市)

「うたたね」 岡田 富子(栃木県宇都宮市)

「森のアーチスト」 金成 照子(栃木県宇都宮市)

「負けてたまるか!」 小平 良長(栃木県宇都宮市)

「一球入魂」 髙塩 定男(栃木県宇都宮市)

「思い出づくり」 福冨 誠(栃木県宇都宮市)

「冬の店先」 新井 辰男(栃木県足利市)

「ミツマタ咲く」 金子 利市(栃木県足利市)

「まつりの男」 近藤 義明(栃木県足利市)

「兄弟の絆(アオバズク)」 八木橋 裕司(栃木県足利市)

「今年のお盆」 北﨑 英信(栃木県真岡市)

「ダッシュ」 粕谷 和幸(栃木県那須烏山市)

「ハンター」 涌井 明男(栃木県芳賀郡茂木町)

「ガルウィング(サシバ)」 宇井 恒雄(栃木県芳賀郡芳賀町)

「赤いダルマ朝陽」 渋井 博道(茨城県那珂市)

「秋の陽うけて」 鴨志田 美代子(茨城県ひたちなか市)

「ファンタジー」 相澤 幸男 (茨城県つくば市)

「夕闇迫る」 荻田 周平(茨城県牛久市)

「朝が早いね」 飯田 正弘(茨城県常陸太田市)

「湖の新緑」 佐藤 功(群馬県高崎市)

 入選

「高見の見物」 金澤 誠(栃木県宇都宮市)

「底冷」 田中 容之(栃木県宇都宮市)

「ブラックホール出現」 堀江 京子(栃木県宇都宮市)

「天を衝く」 櫻木 賢治(栃木県足利市)

「初ゲット」 湯ノ口 忠雄(栃木県佐野市)

「桜の咲く丘」 石川 武男(栃木県真岡市)

「五月の親子」 佐川 栄治(栃木県那須塩原市)

「わたしの街」 塩野 いくお(栃木県那須烏山市)

「乱舞」 田代 宏明(栃木県塩谷郡塩谷町)

「田風景」 角田 孝(茨城県日立市)

「春陽の中で」 粕谷 貞夫(茨城県東茨城郡城里町)

「夏の祭り」 佐藤 秀樹(茨城県ひたちなか市)

「逍遥」 阿部 森也(茨城県水戸市)

「笑顔」 佐藤 征男(茨城県水戸市)

「異空間」 長谷川 博(茨城県水戸市)

「晩秋」 長谷川 正一(茨城県笠間市)

「霞ヶ浦の光芒」 小林 正和(茨城県小美玉市)

「雲海を裂く」 金沢 清治(茨城県東茨城郡大洗町)

「5歳児の覚悟」 飛毛 操(茨城県筑西市)

「苦肉の策」 星野 由紀子(茨城県筑西市)

「竹林の行列(光の祭り)」 前野 富男(茨城県筑西市)

「神たのみ」 出沼 まさ子(茨城県行方市)

「紅い唇」 髙畑 徹伸(茨城県土浦市)

「水墨画」 佐合 隆一(茨城県守谷市)

「竹取物語」 鈴木 憲一(茨城県つくばみらい市)

「飛び立つとき」 松﨑 茂(茨城県つくばみらい市)

「低空飛行」 遠藤 敏男(茨城県牛久市)

「渓谷の秋」 御供 良一(群馬県藤岡市)

「すてきなランチタイム」 木村 千恵子(東京都葛飾区)

「ラインアート」 神保 久子(千葉県柏市)

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2022/08/01
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