第17回「北関東写真サロン」
審査員 木村 惠一(日本写真家協会 名誉会員)
【総評】
日本人の平均寿命は男性80.79歳、女性87.05歳で世界でも有数な長寿国になりましたが、写真愛好家の平均寿命はさらに大幅に上回るというデータが先年の研究発表でありました。論文によると長寿の秘訣は「考える」「行動する」「会話する」との3条件が必要だということです。つまりの脳の活性化と体力作り、そして人や社会とのコミュニケーションが、行動する写真家には全てそろっているということなのです。いきなり寿命の話になりましたが、今回北関東写真サロンの審査を担当し、応募された多くの皆さんが日頃からよく行動しつつ写真を撮り続けていることに大変心強く思いました。
写真は出合いと発見の、日々の小さな旅から始まります。四季折々の暮らしの中に写真の題材は無数に存在しますが、それに出会うためには行動しなければ何も始まらないことは言うまでもありません。北関東の各地は豊かで美しい自然に囲まれ、歴史ある風土に多様な人々の暮らしがいくらでもありますので、身近なものから撮影することを強く勧めます。祭や行事の作品も多く応募されましたが、知名度の高いものだけに目を向けるのではなく、忘れかけている小さな祭や行事、古くから地場で伝えられている伝統的な文化や工芸などにも目を向け、積極的に記録表現してゆくことも写真愛好家としての大切な仕事なのです。
かつて、名匠木村伊兵衛氏も巨匠カルティエ=ブレッソン氏も。良い写真を撮るにはとの若い私の質問に対し、二人ともひとこと「歩くことですよ」を答えてくれました。そうです。優れた作品を創り出すにはまず歩くことなのです。行動することから全てが始まるのです、皆さんのさらなるご検討を期待いたします。
「収穫」奥畑二郎(那須烏山市)コンバインも入らない山間部の田で稲を刈る様子に日本の農の原型を見ることができます。仕事中に声を掛け、会話をしつつカメラを向けたのでしょう。笑顔で撮影に応じてくれた夫婦の、収穫する喜びが自然な姿で表現されました。