全日本写真連盟

第23回北関東写真サロン

審査 写真家・関東本部委員 吉野信

今回のコンテストに、たくさんの応募をいただきましたことを感謝したいと思います。写真愛好家が多い日本の中でも、特に北関東の人々は写真の世界には特別の関心と興味を惹かれたということが、全ての作品を見終わったときに感じられたことが印象に残っています。
 ひところに比べてプリントの質も均一化され美しい仕上げで、プリントを送るごとに楽しみが募ってきたのですが、一人一賞ということでやむなくセレクトをせざるを得なかったというのが,正直な感想です。とはいえ、全ての作品が同じレベルだというのではなく、自分よがりのものも少なくなかったといえます。
 コンテストである以上、プリントの質は勿論のこと、何が狙いだったかということがはっきりしていれば、どの部分をどのタイミングでいつシャツターを切るのかということが、わかると思うのですが、その視点がずれたり曖昧だったりしたものも少なくありませんでした。「プロじゃないからそんなのは当たり前じゃないか」という言葉も聞こえてくるかもしれませんが、人に見せ人の心をしっかりとつかみとる作品を写すということは、けっして優しくはないかもしれませんが、自分なりの目的意識と感性を打ち出すことは、特に大事なことに思えます。
 現在は、デジタルカメラの普及と機材の質の向上で、だれでも気楽に写真が写せる時代になった反面、コンテストの世界はそれなりの厳しさがあることを忘れずに、来年の応募に向けてさらなる精進をお願いしたいと思います。

 最優秀賞「カッパだ~!」 松下 昇一(茨城県かすみがうら市)

おそらくお祭りの時のスナップだと思いますが、画面の切り取り方が正確で無駄がなく、見るものに強い印象を与えてくれます。両手を広げて驚かそうという狙いだったのでしょうが、少年たちのポーズと表情が楽しい驚きを感じたというように見えます。どんな顔をしたカッパなのか、反対側から見てみたいと思うぐらいこの作品は楽しい雰囲気と喜びに満ちあふれています。

 栃木県知事賞「Give Up(カワセミ)」 八木橋 裕司(栃木県足利市)

カワセミを写した作品は数多く色々な場所で見ていますが、くちばしに魚ではなくカエルを挟んだこの映像は珍しいだけではなく、カワセミの食物連鎖の珍しい世界を垣間見せてくれます。長く伸び口を開けたカエルのポーズが強く目に焼き付き,自然界の営みの機微を見せてくれながらも、画面構成の確かさが、野鳥の世界をさらに格調高いものへと高めています。

 茨城県知事賞「デビュー」 塚本 かよ(茨城県水戸市)

お祭りの櫓の席を切り撮ったこの作品は、おかめの面をつけた娘さんを見守る母親の優しいまなざしに加えて、右側のキツネと左側のおかめがその様子をじっと見守る瞬間を見事なタイミングで切り撮っています。無駄のない画面構成で作画されているのは、作者はよく観察してこういった瞬間が来ることを計算し、その時を狙って心躍らせながらシャツターを切ったからでしょう。

 群馬県知事賞「雨あがり」 高橋 八千代(群馬県伊勢崎市)

新緑に彩られた遊歩道の上に飾られた色とりどりの雨傘、雨に濡れた歩道の上を母親に手を引かれて歩く二人の幼子。この場合は、前からではなく後ろ姿であることがより強い印象を与えてくれます。レンズに映り込んだ雨の水滴が、ほどよいアクセントになって春の季節の暖かさと美しさをさらに強調しているように思われます。付近に人の姿が見えないことがこの場の雰囲気を盛り上げているといえるでしょう。

 優秀賞(朝日新聞社賞)「サンタさ~ん」 堀江 京子(栃木県宇都宮市)

どこの水族館での撮影なのでしょうか?今流行の回遊式の水槽の中に、サンタクロースの衣装を着けた潜水夫が挨拶にやってきて、それを見た子供たちが喜びながら近寄っていった瞬間を見事に捉えています。観客がほどよい人数だったためこの場の楽しそうな雰囲気を的確に捉えることに成功したといえます。物事のタイミングの瞬間はいつどんなときにやってくるかは時の運かもしれません。

 優秀賞(全日写連賞)「晩秋の薬王院」 関根 範子(茨城県東茨城郡大洗町)

社の壁に飾られた巨大な草履の奉納物がひときわ目を引きます。「奉納」の赤い色の文字の鮮やかさ、色を移し始めた木の葉の色と、薬王院の社のたたずまいが堂々として、厳かな雰囲気が充満していて、神聖な気が周りを包んでいます。社の右側にたたずむ人の赤い色の衣装の色がアクセントになって、人の日常の営みの喜びを語りつないでいる様子が表現されているように思えます。

 優秀賞(関東本部長賞)「窓ごしの石庭」 岡本 洋三(東京都世田谷区)

秋の季節の紅葉に彩られた樹々がライトアップされ、独特の雰囲気を醸し出しています。櫛目がついた石庭の砂の表面が横からのライトの光で日中では見られない世界を演出しています。寺院独特の窓枠を画面の前面に取り入れ、全体の雰囲気をスクエアで表現したセンスがひときわ目を引き、静かで厳かなたたずまいをさらに高い次元の世界へと誘ってくれるように思われます。

 特選「光輝燦爛」 大屋 信幸(栃木県矢板市)

 特選「魅せられて」 金澤 かずえ(茨城県日立市)

 特選「豊穣の蓮田」 小澤 巸邦(茨城県水戸市)

 特選「雛祭りの日」 飛毛 操(茨城県筑西市)

 特選「夕獲」 佐合 隆一(茨城県守谷市)

 準特選

「散歩道」 小渕 一学(群馬県前橋市)

「闇夜に奏でる」 佐川 栄治(栃木県那須塩原市)

「前日孵化」 島田 繁男(栃木県塩谷郡高根沢町)

「とんぼの目覚め」 平野 隆一(茨城県ひたちなか市)

「勇壮」 小石川 力雄(茨城県水戸市)

「ファミリー」 佐藤 征男(茨城県水戸市)

「嫁入舟」 竹内 誠(茨城県石岡市)

「明治の明かり」 谷島 文夫(茨城県筑西市)

「動と静-3」 岡田 康一(茨城県つくばみらい市)

「一休みだよ!」 齋藤 美喜雄(茨城県つくば市)

 秀作

「天の川」 宮下 久(群馬県太田市)

「お先にゲット」 鈴木 克彦(栃木県宇都宮市)

「精神統一」 半田 智彦(栃木県宇都宮市)

「泣く子」 野々部 護(栃木県那須塩原市)

「竜が舞う」 黒崎 修一(栃木県芳賀郡芳賀町)

「おちゃめな主役」 江川 多嘉(栃木県宇都宮市)

「集合住宅」 吉田 文彦(栃木県宇都宮市)

「フラワードーム」 石川 貞明(栃木県宇都宮市)

「憩いのひととき」 佐藤 秀樹(茨城県ひたちなか市)

「水行」 佐藤 玲子(茨城県ひたちなか市)

「リフレッシュ」 佐藤 邦夫(茨城県那珂郡東海村)

「虹の架け橋」 菊池 保(茨城県水戸市)

「2番列車」 松葉 修(茨城県水戸市)

「侵略」 松本 圭司(茨城県水戸市)

「コロナに負けないぞ」 鶴見 克政(茨城県筑西市)

「微笑み返し」 藤田 正司(茨城県筑西市)

「見入る」 佐藤 健三(茨城県守谷市)

「爆睡」 横山 次郎(茨城県龍ケ崎市)

「タイタニックポーズ」 谷 慶子(茨城県取手市)

「本日野焼き日和り」 高村 和恵(千葉県柏市)

 入選

「鏡の中で」 綾部 すが(群馬県桐生市)

「カモメ飛ぶ浦」 大島 正俊(群馬県藤岡市)

「晩秋の情景」 鈴木 正美(群馬県前橋市)

「全員集合」 大塚 芳彦(栃木県芳賀郡芳賀町)

「挑戦」 野口 佳津江(栃木県宇都宮市)

「里山の行事」 岡田 富子(栃木県宇都宮市)

「怖くないよ!」 北﨑 英信(栃木県真岡市)

「掴まえたぞ」 管野 千代子(栃木県那須塩原市)

「狐火の宵」 涌井 明男(栃木県芳賀郡茂木町)

「クリスタルブルー」 永井 敬子(栃木県宇都宮市)

「ノゾリキスゲ咲く」 金子 利市(栃木県足利市)

「飛翔」 粕谷 和幸(栃木県那須烏山市)

「氷のしたたり」 沢畑 克人(栃木県栃木市)

「光線」 角田 孝(茨城県日立市)

「宙との交信」 五條 芳壽(茨城県日立市)

「祭りの主役」 野上 正雄(茨城県常陸大宮市)

「飛翔」 渋井 博道(茨城県那珂市)

「佳日」 酒井 正志(茨城県ひたちなか市)

「湖畔を走る」 宮内 紘一(茨城県ひたちなか市)

「永源寺の秋」 加藤 紀美子(茨城県水戸市)

「コロナ禍にエール」 水谷 啓一(茨城県水戸市)

「桜花よそおう」 小林 正和(茨城県小美玉市)

「あさざの湖」 井坂 正博(茨城県かすみがうら市)

「濃霧幻想」 田丸 ハルヒコ(茨城県守谷市)

「羽衣伝説」 武井 千鶴子(茨城県つくばみらい市)

「視線」 増田 智恵(茨城県牛久市)

「ダム湖と共に」 矢野 榮一郎(埼玉県鴻巣市)

「グリーンカーペット」 川瀬 進三(千葉県成田市)

「始動」 福田 一男(千葉県流山市)

「ガマの油は効くか」 吉野 義昭(千葉県南房総市)

全日本写真連盟からのお知らせ

総本部
19/4/26 初心者向け公式写真撮影ガイドブック 発売中
総本部
19/2/15 「全日写連」ルールについて
EPSON

English Information

2022/08/01
About The All-Japan Association of Photographic Societies
contact

〒104-8011
東京都中央区築地5-3-2
朝日新聞東京本社内 全日本写真連盟事務局
TEL:03-5540-7413