第20回全日本モノクロ写真展(全日本写真連盟関東本部、朝日新聞社主催)の入賞作品90点を掲載します。全国から627人、3010点の応募があり、写真家の中藤毅彦(関東本部委員)さんが審査しました。
■講評 人物が放つエネルギー 写真家・中藤毅彦
いまだ収束が見通せないコロナ禍にもかかわらず、応募数が昨年より大幅に増えて熱気ある審査となった。前回と比較すると、高校生の応募が増えたことは特筆すべき点だ。若い世代が新たな感性でモノクロの世界に取り組んでくれたことは、うれしい驚きだった。
今回、最優秀賞の作品を始めとして、人物を被写体にした秀作が多く見られた。スナップにしてもポートレートにしても、グッと人に迫った写真の印象は強く残るものだ。人物写真が放つエネルギーには、未来へ続く希望を感じる。
余分な要素をそぎ落とし、光と影を駆使した力強い表現に正統的なモノクロの醍醐(だいご)味が凝縮されている。意志を秘めたような子供の目線と、静かにほほ笑む母の横顔をシンプルに組み合わせた構図の妙も見事だ。
鍛え上げられた存在感のある背中である。説明的要素を排除したことで、より背中の存在が立ち上がってくる。粗い粒子、ハイコントラストの強烈なトーンと、肌や筋肉の質感が絶妙に響き合ってインパクトのある表現となった。
水墨画のような美しいタッチで、霧に煙る谷間を幻想的に描いている。1カ所、鉄塔という人工物を写し込んだのは効果的だ。これによって場所のスケール感も伝わり、自然写真を超えた現代の風景写真として作品が成立している。
祭りという伝統的とも言えるモチーフだが、子供のマスクには今の時代が映り込んでいる。おじいさんの表情や2人の仕草を捉えたシャッターチャンス、背景の処理や構図も完璧で、非常に完成度の高いスナップとなった。