全日本写真連盟

第12回全日本モノクロ写真展

 第12回全日本モノクロ写真展(全日本写真連盟関東本部、朝日新聞社主催)の審査が、このほど朝日新聞東京本社で行われ、入賞作品79点が決まった。応募総数は2213点。審査には写真家の英(はなぶさ)伸三氏と勝又ひろし・アサヒカメラ編集長があたった。

【講評】 前回より応募者数が増え、作品の内容も多彩になった。上位の入賞作品には、被写体への理解の深さが感じられ、表現に関しても作者独自の工夫があった。
 モノクロ写真には本来、カラーでは得られない独特の美しさと強さがある。実際の情景を白から黒にいたる階調の、一種の抽象化した世界で構築するからだ。しかし、今回もプリントが黒すぎたり、全体の調子がフラットでさえなかったりするものがあったのは残念だった。
 高性能プリンターと上質の用紙が普及したいま、これらを駆使して、銀塩写真で培われた美しい魅力あるモノクロ写真の表現技術をしっかり受け継いでほしい。

 最優秀賞「佃島今昔」 宮崎晃一(神奈川県逗子市)

下町の古い住宅街の背後にそそり立つ高層ビル群を的確なアングルで捉え、大都市東京の膨張ぶりを伝えている。めりはりをきかせた美しいプリント仕上げが主題を明確にしている。

 朝日新聞社賞「憤怒の川を渡る」 山本公一(大阪市大正区)

山に異変が起きたのだろうか、猿たちが激流に渡されたケーブルを伝わって大急ぎでこちら側に移動している。降り注ぐ水しぶきの間に、静かに岩の上で獲物を狙うアオサギを配しているのも面白い。

 全日写連賞「家族」 吉田照人(長野県長野市)

 空き地の片隅に置かれたバスの廃車の昇降口に、縦に並んだ子どもたちと飼い犬。犬まで笑っているように見えて、作者の巧みな演出が記念写真の枠を超えた作品にした。

 関東本部長賞「ひとりっ子」 佐々木久(埼玉県北本市)

想像すると、保育園の帰り道、誰もいない公園で子どもを遊ばせる母。その背中からは,幸福感だけでなく、子育てや仕事の疲れとか、将来に対するちょっとした不安までもが感じられる、奥行きの深い写真だ。

 特別賞「てんでんに」 高戸 二三男(長野県長野市)

 アサヒカメラ賞「ふたり」 鈴木 賢(埼玉県さいたま市)

 特選

「爪痕~忘れてはいけないこと」 大沢 忍(山梨県笛吹市)

「街」 中澤ふみ子(埼玉県さいたま市)

「いざ、勝負」 菊地博子(埼玉県桶川市)

「怪樹の吐息」 小薬 勝雄(茨城県ひたちなか市)

「気だるい午後」 国広妙子(千葉県佐倉市)

 準特選

「兄弟」 水谷 寛(三重県四日市市)

「明日は来る」 藤原純三(大阪市西区)

「激走」 渡辺修一郎(静岡県田方郡)

「急いで!」 山田 康(静岡県静岡市)

「ある雨の日の情景」 鍵本裕次(広島県広島市)

「通学」 三浦恵美子(埼玉県さいたま市)

「雨上り」 岩田隆美(広島県福山市)

「戯れる」 三好 紘一(埼玉県川越市)

「阿蘇谷の朝」 古田哲也(熊本県宇城市)

「いっぷく」 前田明彦(大阪府豊能郡)

 入選

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2022/08/01
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