審査
写真家・関東本部委員 清水哲朗
アサヒカメラ編集長 伏見美雪
【総評】伏見美雪
モノクロで撮る必然性の感じられる作品が、全般的に少ないように感じられたことが残念でした。ただカラー作品をモノクロにしただけでは、人の目や心を留めることはできません。なぜモノクロでなくてはならないのか、明確な答えを持って撮影に臨んでほしいと感じました。人物を撮影した写真に関しては、後ろ姿や、点景といった応募作品が多く、「顔」が見えるものが上位に残りました。肖像権の問題で人を撮るのが難しい時代ではありますが、声を掛けることをためらわずに挑んでほしいものです。そして、写真は、プリントまでを含めて作品です。審査に大きく影響しますので、用紙、印刷方法、余白の取り方など、自分の写真にふさわしいものを追究し、丁寧に仕上げてください。
見るほどに想像が広がっていく、祭りの傑作オフショット。いつの時代にタイムスリップしたのか動揺気味に確認する若き清正と身じろぎもせずに答える年配の男性、怪訝な表情で様子を見守る女性。三者の絶妙な間に笑いがジワジワとこみ上げる。(清水)
沖縄の儀式と思われるが、二人の神妙な面持ちにこれ以上近づいてはいけない空気が写真から伝わってくる。印象的な光と影の取り入れと巧みな空間構成、人物配置で魅力的な作品へと昇華させた作者の技量の高さは本物。後世に残したい一枚だ。(清水)
ビニールで覆われた畑を見て独創的なタイトルを思い浮かべる想像力のたくましさ、畑95%:天5%の大胆な構図、メリハリある光と影のつけかたはモノクロ表現の申し子のよう。カラーから色を抜いただけの安易なモノクロ写真とは一線を画している。(清水)
お父さんと息子でしょうか。顔はもちろん、耳や手の形まで似通った2人が、背中を合わせて立っています。片や黒い髪に白いセーター、片や白い髪に黒いシャツ。モノクロだからこそ、対比が際立ちます。大の大人が、しかも親子で、真面目な顔で背競べをしていおかしみもありますし、じつは、背の高さだけではなく、お腹のサイズも似ていることが、じわりと笑みを誘います。仮にタイトルが「腹競べ」なら、さらに上位に選ばれたかもしれません。(伏見)
水面に映る小島。薄靄がかかり、背景が烟っていることで小島が浮かび上がって、より静謐な空気を醸し出しています。けっして珍しい風景ではありませんが、非常に階調が豊かなことに加え、用紙選びも含めプリントの美しさが群を抜いていて、目を引き寄せる力がありました。(伏見)