第17回 全日本モノクロ写真展
審査総評 清水哲朗(写真家・全日本写真連盟関東本部委員)
色情報をなくすことで見る側を非現実の想像世界へと誘うモノクロ写真。撮影者は光と影で立体感をコントロールし、空間構成でイメージを広げ、瞬間の妙によって印象を絶対的なものへと昇華させる工夫が必要だ。上位作品はそれらが凝縮されて余韻も広がったが、選外作品はカラー写真を単にモノクロ化しただけで物足りなかった。用紙選択、豊かな階調、メリハリなどプリントワークも重要だ。内容は良くても周辺を必要以上に暗く落としてインパクトを狙った作品、雑な仕上げの作品はすぐに選外とした。
期待・不安・可能性がシンプルな画面に凝縮されている。ルールを知らない人にも展開が読めるフレーミングで好奇心を煽るだけでなく、黒壁に浮かび上がる人物とのホールドの階調表現も素晴らしい。観察・洞察力の優れた作者だ。
海外の漁村風景。バラック小屋の先に広がる高層ビル群。燦々と光が降り注ぐ白昼の新旧入り混じる風景に想いを馳せる。人々はなぜか太鼓をぶら下げている。村人も集まりつつある。祭りなのかはわからない。真相もまたタイトルの如し。
肖像権云々が取り沙汰される昨今、こちらを見据えたポートレート写真の強さを感じる。しかし、作者は主題をあえて中央から外し、画面上部に空間を大きく取っている。ポートレートとは人物像表現である。義父との関係性が興味深い。
視線誘導を狙った画面構成により花のようなものにまず目がいく。女性が訝しげな表情でそれを見つめている。何だろうか。作者曰く、正体はトウモロコシらしいが、実像と虚像、ガラス内の人物などバランスよくちりばめていて写真的に面白い。
パッと見では何が起こったのかはわからない。しっかりと写真を見なければこの状況は理解できない。映り込みによるシンメトリー。作者が表現したかったのは意外性、視点の面白さ、瞬間の妙。手に提げたビニール袋が余韻を広げている。