第14回全日本モノクロ写真展(全日本写真連盟関東本部、朝日新聞社主催)の入賞作品86点が決まった。全国から322人、2042点の応募があった。審査には写真家の熊切圭介氏と佐々木広人・アサヒカメラ編集長があたった。
【総評】(熊切圭介)
最近は日常生活の隅々まで色彩が氾濫している。写真の世界もデジタル写真の普遍化もあって、カラー写真全盛の感があるので、逆にシンプルなモノクローム表現を目にすると新鮮で刺激的に感じる。今回のモノクローム写真の応募作品を見ても、カラーに較べて寡黙に見えるモノクローム作品が、実は作品内容を饒舌に語っていることが多いのに気づく。モノクロームにしか表現できない作品の魅力を強く感じる。
バングラディッシュでジーパンの山を運ぶ青年を撮影したもの。暗い背景、髪の毛、肌、そして青年を覆わんばかりのデニム素材……これだけ濃い色の密集すれば、印象の薄いモノクロ作品になりそうなものだが、光の絶妙な差し方、シャープなピント、目や歯の鮮やかな白色が写真にスパイスを効かせ、実にインパクトのある写真になっている。(佐々木)
足先が浮いていることからわかるように、僧侶が全身で鐘を突く瞬間を見事にとらえた一枚。カラー写真でもそれなりに面白い作品になりそうだが、あえてモノクロ作品に仕上げられたことで、その場の緊張感がきちんと伝わってくる。だからこそ足先の浮きかげんがコミカルに感じられる。シャッターチャンスと色味の選択が奏功した作品だ。(佐々木)
帰り道を急ぐ女の子の足元にじゃれつく子猫の姿が可愛らしい。モノクローム写真の持つシンプルな表現を生かした作品で、淡い詩情を感じる。僅かな逆光が、子供と猫の輪郭を柔らかく浮き上がらせ、美しい作品になった。(熊切)
自転車競技場のバンクにさしかかった選手たちの姿を鮮やかなタイミングでとらえている。角度のある光線状態の時に撮影しているので、ややデフォルメされた影が、映像としての面白さをともなって描かれている。(熊切)