審査 写真家・関東本部委員 ハービー・山口
総評
モノクロ写真を撮る方々は、とても写真の本質を理解していると感じます。一見綺麗な色が画面にあると、そこに目がいってしまいます。それは悪いことではありませんが、表面に写っている物事の裏側、あるいは表面の下に存在する深層を撮ろうとすると、時として色の要素が不要になります。深層(テーマ)を表現することに成功した時、結果として色が無い分、写真の存在感が強烈になるのです。モノクロというと写真の他に水墨画などいくつかの例が思い浮かびますが、物事の本質に迫ろうとする一つの手法なのです。
ご年配の方の手先。画面中央には針に糸を通している様子が写っています。裁縫を生業としている方でしょうか。この手先で起きている事柄が、この方の人生が凝縮しているようです。一切の無駄を排したシンプルかつ強い一枚です。
願い事を書いている女性の横顔、そして力が込められた指の形に、この女性の真剣さが見て取れます。特に瞳から伺える力強さに、並々ならぬエネルギーと胸中が見えます。横顔にはその方の人格が、より正直に表れるように思います。
構図の切り取り方に目が止まりました。赤ちゃんを膝の上に乗せたお父さん、その膝の辺りで構図を作るという大胆な切り取り方が新鮮です。お父さんの笑顔を写したいと思いがちですが、それを排したセンスに驚かされます。
ホルンを演奏する4名。衣装を見ると何かのイベントなのでしょうか。背景のディティールを排し、黒一色にすることで演奏者が浮き立ちました。4人が上を向いていることで、この場面がポジティブになり、未来に向かう力強さにつながりました。