第13回全日本モノクロ写真展(全日本写真連盟関東本部、朝日新聞社主催)の入賞作品79点が決まった。全国から401人、2388点の応募があった。審査には写真家の熊切圭介氏と伏見美雪・アサヒカメラ副編集長があたった。
【講評】熊切圭介氏
デジタルカメラの急速な機能アップもあって、最近はデジタルによるカラー作品を撮る人が圧倒的に多い。しかし銀塩時代から続く長い歴史を持つモノクローム写真に、限りない魅力を感じる人も着実に増えている。
深味のある表現と豊かな階調は自然や人間を深いまなざしで捉え心を伝える。今回の入賞作品でも変化に富んだモノクロームの世界を見事に表現した作品と数多く出会った。
静寂に包まれた湖面に少年が飛び込んだ瞬間を絶妙なタイミングで撮影しており、写真というメディアの持つ面白さを見事に表現している。この直後の光景を想像する楽しさがある。
中国で撮影した作品だと思うが、点滴の袋を棒に付けた姿で人混みの中に佇む母子の情景に、厳しい現実を強く感じる。母親のうつろな表情に貧しくつらい生活がうかがえ、胸に迫る。
画面から男たちのすさまじい熱気が伝わってくる。スローシンクロで撮影しているので動感が強調されている。画面を汗にまみれた肉体だけで構成したことにより、迫力ある作品になった。
ひそやかで静謐な世界が見事な構成で描かれている。数人の僧侶が顔を寄せ合い、なにやらひそひそと話し合っている姿に、西欧の宗教画を見るような面白さを感じる。