全日本写真連盟

第14回東北写真サロン

審査員:藤村大介(写真家・関東本部委員)
【総評】
コロナ禍で多くのイベントが中止になる中での被写体探しは苦労しただろうと思います。しかし良い作品を撮影できている人は、違う視点を持っています。良いシーンに巡り会えることが分かっている、ある意味決まりの瞬間にとらわれない視点を持っている方は、素晴らしい作品を撮る確率が大きいのです。決まりの「絶景ポイント」や「SNSで見かけた風景」に憧れを持つのは悪いことではありませんが、自分らしいオリジナルな視点で作品作りを心掛けると、自ずと撮影する段階で考えることが身に付きます。真似する事は最初は必要ですが、考えて自分の作品を撮影できた時の喜びは、計り知れないものだと思います。何もない河原や田んぼなどで撮影会をしてみましょう。自然と、撮影のために探す目と考える脳がフル回転で動くようになってきます。
コロナから解放されつつある今だからこそ、次回以降はもっともっとオリジナリティに溢れた作品が、どんどんと応募されてくるだろうと期待をしています。

 最優秀賞「雪の中の飛び立ち」 藤島純七(宮城県)

素晴らしい作品に巡り会え感動いたしました。白鳥の飛翔はよくありますが、このような雪の中での飛翔シーンでここまで美しい写真は見た事がありません。玉ボケになった雪が望遠による圧縮効果で無数の光の玉のように輝いている様に見えます。雪が降る日ですから暗く撮影条件は厳しかったと思うのですが、プリントまでの処理、仕上げも良く、羽根の白さや透明感、跳ねた水飛沫のダイナミックさまでもが全て美しく仕上げられています。大雪が降る中で粘り強く撮影した努力の賜物と言えるでしょう。

 朝日新聞社賞「雨傘」 寺田保正(秋田県)

愛らしいお子さんと傘のビニール越しに目があった瞬間。何気ない日常のワンシーンでいつでも撮れそうな1枚ですが、実はこのようなスナップショットはなかなか撮れないものです。雨の日にカメラを下げて歩いているか、傘越しでも良しと狙える視点を持っているか、スナップの醍醐味は「いつでも撮る!」から生まれる傑作があるという事なのです。

 全日本写真連盟賞「幽湖昇陽」 佐藤友信(福島県)

とても幻想的で美しい作品です。おそらく手前の黒くつぶれている岩を入れるかどうかを悩んだのではないかと思いますが、これはどちらも正解ですね。しかし、入れない場合、より幻想感は強くなるのですが、よくある写真になってしまいそうです。黒い部分が入ることで少しリアリティが増し、遠近感を作る事ができているので、手前、中程の島、奥の毛嵐や山並み、という3段構えの構成で距離感が掴みやすくなっています。これはネイチャーフォトでは特に大切な考え方です。

 青森県優秀賞「飛び散る湯玉」 長尾義彦(青森県)

水を使った祭りや神事は多く、写真の被写体としてもよく撮られます。これは寒い時期に湯を使った神事、弾け散る水(湯)の球と湯気の迫力が良いですね。ドキュメンタリー写真の基本は、ありのまま、改竄無く、アートに転ぶ事なく状況が分かるように撮影する事です。そんな中でより良い作品にするための絵作りの努力、そこに工夫と力量が現れるのがドキュメンタリーと言えます。

 秋田県優秀賞「雪にも負けず」 高橋信夫(秋田県)

この様な雪の中でも伝統的な形として結婚式が執り行われているのであれば、とても厳しい地域の特徴が出ており、それを記録する写真の役割は非常に大きな意味を持ちます。人工的に照らされた照明だけで良いところを、あえてストロボをシンクロさせ雪を写している技術は素晴らしいですね。顔など重要な部分に光った雪が被っていないので、より良く状況が判ります。

 岩手県優秀賞「怖いけど」 北井崎昇(岩手県)

怖いもの見たさ。これは誰もが持っているのでは無いかと思う感情の一つですね。そんな視線から覗く獅子の姿は激しく舞い、今にも襲われそう。そんな気持ちを抱いていたのでしょうか、とても不安気な表情が気になります。解像感が甘く色味も偏り気味、スローシンクロで獅子は被写体ブレ、と写真自体に「美しさ」は無いものの、かえってそれが臨場感やリアルさ、ドキドキ感を誇張し、作品の味を引き出している良い作品です。

 宮城県優秀賞「小さな漁港」 佐々木均(宮城県)

漁港には暮らしがあり、文化があります。この小屋では漁に必要な作業を行なっているのでしょう。ブイや籠など文化が伺えます。良い時間帯の撮影ですね。美しいブルーの風景は、真っ暗になる直前のブルーモーメントが終わりかけた頃、ホワイトバランスの操作で若干紫がかる色合いにするとこのような神秘的な青になります。光跡から露光時間を予想すると、この場所はかなり暗い場所なのだろうと想像できます。

 山形県優秀賞「天翔ける 」 成田重人(山形県)

大空を翔る鳥のように、人も空を自由に飛び回りたいという夢は太古の頃から変わらぬ想い。はるか先の大地は、先が見えない厚い雲に覆われています。さてこの先の運命やいかに!と言う印象でした。よく見かける様な写真に見えますが、前述の様なストーリーを思い描けばとても意味深い写真です。昔からある有名なポイントも条件や表現方法によって良い作品に変わるものです。

 福島県優秀賞「お参り」 中村邦夫(福島県)

何十年も前から変わらぬ光景なのでしょう。お地蔵様に花を。今でも田舎にはこの様な風景があるのですね。思わず胸にジーンと響く、とても良い写真です。信仰を大切にし、そして地域も大切に思うこと。これは和の心の良い一面ではないかと思います。桜の時期に撮影したのも成功の要因ですね。

 入選

「コロナよ去れ!」 成田敏(青森県)

「渓流を彩る」 附田日出行(青森県)

「権現様頼み」 福田修逸(青森県)

「永き日の公園」 嶋川龍雄(青森県)

「新家族の誕生」 佐藤義敏(秋田県)

「兄・妹絆誕生」 豊島成孝(秋田県)

「こんにちワン」 高山明(秋田県)

「楽しいお出かけ」 菊地英子(秋田県)

「幼ない視線 」 齊藤等(秋田県)

「暗黒舞踏~集中~」 鈴木哲郎(秋田県)

「祭りが始まる」 鈴木佐和子(秋田県)

「独居」 小幡一弘(岩手県)

「復興の音色に合わせて」 工藤滉大(岩手県)

「夏の音」 浅黄成美(山形県)

「若者の叫び」 小野浩也(山形県)

「雪降りのお買い物」 豊岡守一(山形県)

「三羽が通る」 齋藤彰(山形県)

「冬備え」 山本かつい(宮城県)

「迫る磯波」 我妻忠男(宮城県)

「水映り」 長田三雄(宮城県)

「壮麗な夕暮れ」 三浦早苗(宮城県)

「白鳥一家VSトビ」 佐藤宣雄(宮城県)

「朝日に舞う」 大金由夫(宮城県)

「ひと休み」 後藤博(宮城県)

「大河の夜明け」 齋藤吉信(宮城県)

「餌の奪い合い!」 庄子源六(宮城県)

「うわ~満開だね!」 梅津直樹(福島県)

「昔取った杵柄」 馬場正幸(福島県)

「夏休み」 松本俊一(福島県)

「馬追い」 石原すえ子(福島県)

「コロナ退散を願って」 佐藤智子(福島県)

「愛犬と拝む」 佐久間幸子(福島県)

「凍てつく滝」 宇佐見冨士夫(福島県)

「烏の城」 根上直行(福島県)

「登り窯」 黒澤文(福島県)

「帰り道」 折笠正人(福島県)

「野馬遊ぶ」 半澤英安(福島県)

「へたる」 髙橋清良(福島県)

「お父さんと」 只木吉昭(福島県)

「ひと休み」 佐々木正男(福島県)

「新緑を画く」 森藤哲良(福島県)

「晩秋の里朝」 佐藤節子(福島県)

「爽やかな春」 池上和夫(福島県)

「継承者」 相田勝仁(福島県)

「祈り」 菅野千代子(栃木県)

「かがり火に浮かぶ」 小島為玖生(神奈川県)

「狭間」 長谷川護(東京都)

「好日」 中道勉(神奈川県)

「吹雪後のかわいいモーターカー」 佐藤国利(千葉県)

全日本写真連盟からのお知らせ

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19/4/26 初心者向け公式写真撮影ガイドブック 発売中
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19/2/15 「全日写連」ルールについて
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2022/08/01
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