「第6回人間大好き!フォトコンテスト」(全日本写真連盟関東本部、朝日新聞社主催)の入賞作品94点が決まった。全国から490人、2723点の応募があった。審査には全日本写真連盟会長で写真家の田沼武能氏があたった。
【総評】
「事実は小説よりも奇なり」とイギリスの詩人バイロンが述べている通り、実際に起きる出来事はフィクションの小説よりもはるかに不可思議であり、波乱に富んでいます。
人間は生まれた瞬間から、それぞれの人生のドラマを演じ生涯を終えてゆくのだと私は考えています。まさに「人間万歳」です。
今年もたくさんのすてきな作品が「人間大好き!フォトコンテスト」に応募されてきました。一年をかけてこのコンテストを目指して撮った熱の入った作品も多く、それだけに審査にも熱が入ります。今年は大胆に群衆をシルエットで表現したもの、再会の喜びのあふれた作品、愛馬と家族の物語等々、作者の感動が伝わってくる作品が上位に選ばれました。
良い写真を撮るには好奇心と行動力が重要です。そして自身の感性で被写体を発見して、そのピカリと輝いた瞬間を捉えることです。
身近な家族や友人、動物たちもよい被写体です。ぜひ感動を捉えた作品で次回のコンテストにチャレンジしてください。
大胆に群衆の中にいる家族をシルエットで表現しており、顔が見えないだけ、巷の騒音や会話が想像でき、家族の絆が一層強く感じられます。列より一歩前に男性が一人おり、その人物だけがハーフトーンで、画面に奥行きを表現し、迫力ある作品に仕上げています。フレッシュなアイデアが良い。
逃げ出したポニーを追いかける馬主(?)の親子、ポニーの跳ねる格好、親子が揃った足並みで追う姿にスピードを感じさせます。観る者にとっては微笑ましい光景ですが、親子にとっては一大事件です。その瞬間を逃さず撮影した作者の普段からの心がけがすばらしい。
祭り行事にかかわる人たちは、おしなべて郷土愛に満ちています。みんな年を忘れて子ども時代に戻り、孫ほど年齢差のある子どもたちと祭りを楽しみます。六尺棒のピラミッドの檻の中で子どもの世話をする長老は、彼にとって至福な情景を感じさせる作品です。
たかが記念写真、されど記念写真です。天使に表徴される彼女たちは学校を卒業して看護師に成り立ての嬉しい時です。ピースマークをかざしてカメラに微笑みを見せる。しかし、よく見ると一人ひとりの表情に違いを感じるのも人生模様ですね。
「兄弟の絆」 内津喜重(長野)
まさに兄弟でなければ考えられぬ光景です。兄が弟に足蹴りされている様なポーズ、お兄さんの鼻がぺちゃんこに潰れています。新しく誕生した弟が目の中に入れたいくらい可愛くてしようがないのでしょう。すばらしい人間愛を感じます。
「名人戦」 長谷川静江(栃木)
玄関先で日向ぼっこをしながら友人と名人戦を行っている光景でしょう。勝った方はゴザの上に正座し、負けた方はあぐらをかいている。観戦者のおばあちゃん一人、脱いだスニーカーが生活の中の一コマを感じさせます。庭に咲く花も立派な脇役になっており楽しい写真です。
「大きくなーれ」 小高達男(千葉)
下校途中、かかしの展示会場で道草をしている小学生たち。かかしの前でただ記念撮影では面白くない。子どもたちにジャンプをしてもらい動感を加えたのでしょう。子どもたちがカメラマンの求めに答えて楽しそうにジャンプしています。とりわけ眼鏡の少女の表情がすばらしい。
「ダッシュ」 尾上篤子(神奈川)
画面から読むと、イベントの一コマと思います。スタートダッシュの一瞬をとらえており、走者の3人は真剣な顔で、照れ笑いをする子、それぞれの表情が素敵です。競うは文化の始まりといわれます。大いに競って人生を楽しみたいですね。
「ローカル線」 大和久誠司(千葉)
ローカル線は経営難の路線が多く、観光客集めにおおわらわです。この光景も村人たちが乗客にサービスする情景を写したものと思います。村人の顔は見えませんが、後ろ姿からユーモラスであり、かつ真剣な表情を感じ取ることができます。