審査 写真家・関東本部委員 大西みつぐ
故田沼武能先生が長年担当された「人間大好き」の審査を引き継ぎ、責任の重大さを感じ、大いに緊張もしました。コロナが収まりつつある中、みなさんの写真から活力を感じ、人と人が出会い、集える日々がどれほど大切なものであるか身に染みて感じました。撮影技術に加え、正攻法で人間を率直にとらえる表現力の向上にうれしさを感じます。一方、あるパターンを踏襲し、「及第点」にとどまる作品も目立ちました。「笑顔」は確かに幸せの象徴ですが、被写体と撮影者の共有する時間は日々の喜怒哀楽すべてにあります。そうした「切実」な思いを慎み深く表現することも、写真活動の一つでしょう。
コロナや戦争。私たちが困難な時代に生きているのは確かです。そんな時代や状況でも人は自分たちを律していけるはずだと、この煙が神事で、神聖なものだからこそ、信じてみたくなります。そして写真から浮かび上がる「人間像」のたくましさに圧倒されます。瞬間を見事にとらえ、そこから続く私たちの日常がイメージとして表現されているのではないでしょうか。
「カメラアングル」とは単なる形式や美的センスの問題だけではなく、被写体といかに向き合ったかという撮影者の姿勢も示しています。養蜂家を「尊重」したこの写真は、同時に飛び交う蜂の姿も生き生きととらえました。くっきりした色彩も気持ちよく、その相乗効果は写真に活力と明るさを与えています。そこから、この人の生き方も想像させてくれます。
恐らく、一日の終わりの光景。空を見上げる自由と安堵感は、家族同然の犬も同じ。もう少しとどまりたい気持ちは私たちにも痛いほど分かります。「人間大好き」とともに、生きる喜びそのものが表現されているようです。私たちは「そろそろ帰るべき家」をめざし、そこからまた明日を紡いでいくはずです。一枚の写真に隠された多くの物語が浮かんできます。
これから成人の日のお祝いを家族でにぎやかにするのでしょう。スクスク育っている子どもたちと、若い両親の笑顔が画面いっぱいにとらえられ、はちきれんばかりの幸福感が写真を見る私たちにも元気を与えてくれます。真正面からの撮影をお願いしたのか、家族の照れが素直に表れています。日本の少子化対策は、こんな笑顔を基に進められるべきかもしれません。