審査 写真家・関東本部委員 大西みつぐ
【総評】
各県応募総数の違いがそのまま結果として表れているようです。それはそのままたくさん撮るという個々の課題に結びつきます。今回目立った作品としては、「撮影会」方式で演出したスナップショットを大勢の人々が囲んで撮るというものが複数ありましたが、ちょっと苦しい形式であると思います。木村伊兵衛や土門拳の時代に戻らなくともよいですが、自然で切実な、あるいは溌剌としたスナップショットを期待したいところです。
秩父の写真家・南良和さんの「ある山村・21歳の花嫁の手」(1972)を思い出します。この作品も切実なイメージとともに、温かみと優しさが写真を見るこちらを貫き個々の記憶に繋がります。「写真」ならではのイメージと表現。レンズ、絞りなどギリギリの設定ながら、主題にしっかり沿った表現力を発揮しています。人間の尊厳をしっかり考える時代に私たちは今いることを忘れてはなりません。
しばし写真に心を癒されるというのはこういう風景。この小さな川の流れの奥へ奥へと誘われます。誰もが持っている「ふるさと」のイメージ。永遠の桜、子どもたちの歓声、トラクターの音、日本の春を余すことなく散りばめ写真を撮ることの楽しさと喜びをしっかり伝えてくれています。
雪面の反射が暗い入り口を明るく照らし、白菜と大根を抱えたお母さんの笑顔が素敵で美しく捉えられています。その存在感と同等にスコップや農具や笠もそのままそこにあり、日常の息吹を伝えています。その場で、モノの配置に自然に目がいくということは作画の上でとても大切なことです。
かつてリバーサルフイルムを撮っていたみなさんなら、少しアンダー気味に撮りたくなるものですが、昨今のデジタルではこんな明るめの写真が好まれたりします。堂々と逆光もフレアもゴーストも活かすという作品ですが、両者の触れ合いが美しく眩しいまでのイメージとして結集されています。
この神秘的な霧にすっかり包まれてみたいという気持ちにさせてくれます。色彩をいかにコントロールしていくかは、単に画像処理ソフトの使い方だけの問題ではありません。撮影現場での「記憶色」が大事です。そこに露光時間も細かく関わり、結果としてこうした美しいイメージが展開できます。