主 催:全日本写真連盟甲信越ブロック・朝日新聞社
審査員:写真家・全日本写真連盟関東本部委員 小林 紀晴
【総評】
昨年に引き続き甲信越写真サロンの審査をやらせていただきました。日本のほぼ中央に位置する山梨、長野、新潟の三県は狭い範囲のようで、実はとても広く多様です。日本一高い山があり、幾つもの険しい連峰があり、そして海がある。さらに分け入るほどに独自の文化や風習が残っています。四季がはっきりしているのも特徴です。実にフォトジェニックな地なのだと、今回審査をやらせていただくなかで改めて強く感じました。
巨大なかまくらでしょうか。年配の女性がこちらに向かって歩いてきます。雪の反射で光がよく回っています。入口が窓枠効果となり、奥行きを感じさせます。何より女性に、この地で長く生きてきた存在の強さがあります。
新潟県越路紅葉園で撮られた一枚です。水面への反射と実像が見事に重なっています。そのため池の底にさらに別の世界が広がっているように感じられます。フレーミング、露出、ピントといった技術的な面もクリアされています。
とても迫力のある一枚です。写っているには女性ですが、本来は男性の装束を身につけていることもあり、たくましさがあります。同時に髪型、お化粧などから女性らしい可憐さも感じます。そのコントラストが新鮮です。
タイトルから、そもそもは飼育されていたトキだとわかりました。果敢にトンボらしき虫を追っています。半逆光が広げた羽に当たり、美しいです。それにしても見事な一瞬です。おそらく長い時間をかけて追っているからでしょう。
かなり引いた位置から撮影していることに、作者の意識的な抑制を感じます。それにより、見る側が引き込まれます。物語を感じやすいからです。虫の鳴き声、風の音、太鼓の響きといったものが自然と写真から聞こえてきます。