審査 写真家・関東本部委員 清水哲朗
【総評】
作品内容に加え、プリントクオリティや用紙選択も評価に響くと前回の総評でお伝えしました。時間、お金、労力を惜しまず撮影した渾身の成果ですから、粗悪な仕上げや強調しすぎた色やプリンタのメンテナンス不足で順位を落とすのは余りにもったいない。今回はそれらが改善されたことで予選から見応えがありました。
甲信越は自然に恵まれ、地元に根づいた祭りや文化慣習も多く、いわば被写体の宝庫。老若男女問わず写真熱も高いため撮影対象を県外から世界にまで広げれば素晴らしい作品がコンテストに多く寄せられるのは自然の流れ。惜しくも上位には選ばれませんでしたが、山梨県民の撮る富士山は場所選びやアプローチが地元ならではで富士山との関わりも感じられ目をひきました。地元では当たり前のイメージでも他県や全国のコンテストでは高評価される作品もありますので今後も撮影、セレクト、応募とあきらめず挑戦し続けてください。
望遠で捉えた高所清掃風景。防塵マスク着用の作業員がライトに照らされていることで表情、仕草、水飛沫すべてが効果的に浮かび上がりました。輝度差が大きいと画面にメリハリがつくだけでなく作品インパクトも大きくなります。特殊環境での清掃風景が珍しかったことも高評価に繋がりましたが、遭遇してもレンズを向けるかどうかは撮影者次第。影で安全を支える作業員への感謝とリスペクトを感じる一枚です。
猛禽同士の獲物の奪い合いを迫力ある構図とシャッタータイミングで捉えています。どちらもオオタカですが、色や模様の違いから右が成鳥、左が幼鳥とわかります。先客は嘴に血がついている成鳥。そこに幼鳥が喧嘩をしかけて成鳥がギリギリ回避した珍しいシーン。この後の展開はわかりませんが、急なシャッターチャンスを逃さずものにした作者の瞬発力と高い技術力、観察力が自然界の厳しさを伝える傑作を生みました。
なぜこうなったと身を乗り出して見てしまうほど好奇心をくすぐられます。三歳児の七五三、長距離歩かねばならない、着物を汚されたら困る、ぐずられないように大好きな絵本と共になど目的達成のため親御さんが努力、工夫、配慮した結果かもしれません。カートを引いているのはお兄ちゃんかな。少ない情報から想像力をフルに働かせて写真を読もうとすること自体、作者の術中にハマっているのかもしれません。
ここまで濡れるとトンボも羽を休ませるしかありませんね。自然界を生き抜くのは悪天候を耐え忍ぶ体力と工夫、天敵から狙われない運がなければ大変なのだろうとこの一群を見て想像できます。タイトルにあえて具体的な数字を入れ込んだのは作者が被写体への興味関心があり、ずっと観察をしていたからかもしれません。写真には写らない情報をタイトルに入れることで被写体や表現世界の解像力、臨場感がグッと上がります。
梅干しの天日干しを副題に人物の人柄を巧みに描いています。見ているだけで唾液が出てきますが、ご婦人方はそれとは無縁のようで笑い声が聞こえてきそうなほど和やかな雰囲気に収まっています。現場の空気作りは撮影テクニックのひとつ。和気藹々とした場面では作者のように同じ輪に溶け込むことで自然な笑顔を引き出せます。季節を感じるタイトルには風情があり、ここからも想像力を掻き立てられました。