全日本写真連盟

第22回甲信越写真サロン

審査 写真家・関東本部委員 清水哲朗

 風景、スナップ、お祭りにポートレートなど、バラエティー豊かな応募作に世の中の再始動を実感。ここ数年のもどかしさから解放されたことで、撮る撮られるどちらからも喜びが伝わってきました。
 全体の印象としては「点景」作品が多いように感じました。人との接触を避けていたのかもしれませんが、人物を撮りたい、でも肖像権が気になるので人物は小さめに。はまれば効果的な状況描写も、遠慮や苦肉の策、弱腰アプローチと判断されると逆効果。声かけ、近距離から対峙した作品、モデル撮影と並べると見劣りしていたのは否めません。人物写真の横顔や後ろ姿狙いも然り。こんな時代だからこそ正攻法に魅力を感じます。
 応募プリントはジャンルに関わらず、粗悪な仕上げや強調しすぎた発色、プリンタのメンテナンス不足により順位を落とした作品が多数あったのが残念でした。自身の評価の低さが気になった人は最後の詰めの甘さに問題があったかもしれません。コンテストでは作品内容と合わせ、プリント(クオリティ)や用紙選択も評価材料になります。不自然な強調よりも階調の豊かさやメリハリ、仕上げの美しいプリント作品が高評価につながります。

 朝日大賞「目覚め」 樋口紘一郎(新潟県)

雪景色と水鳥が織りなす壮大なシンフォニー、圧倒的スケールに息を呑みました。長く凍てついた夜の終わりを告げる、山頂に差し込む朝日。夜明け前のブルーモーメントで冷たさや厳しさを表現する方法もありますが、朝日の当たるこの時刻を選び「安堵(生きていた喜び)」「温もり」「希望」を表現し、見る側の心に響かせているのが本作の魅力。多数いる水鳥を主題にしがちなシーンですが、山を主題としたことで視点を定めたのも好判断でした。

 朝日新聞社賞「楽屋」 野澤和幸(新潟県)

妖艶さに惹き込まれます。表情や科を作るのはモデルの演じかたや発せられるものに左右される部分もありますが、撮影者の的確な指示がないと引き出せません。現場での雰囲気づくりやライティング(光の選びかた)、状況描写なども撮影者に求められる大切な要素。そのすべてにおいて隙がありません。モデル本人を手前に暗くぼかし、鏡を使った間接アプローチ(虚像)で表現するアイデアも見る側の想像力を煽り、妖艶さを後押ししました。

 全日本写真連盟賞「危険な技」 北村民治(長野県)

観客の表情が真剣で思わずこちらも手に汗を握ってしまう臨場感があります。成人男性が二人がかりで振るくらいの纏ですから、よほど重たいのかもしれません。高低差を感じさせる撮影ポジション、被写体が光で包まれているように描く半逆光、無駄のない画面構成と写真を立体的に表現しているのは作者の技術力の高さの証。それだけにタイトルの「危険な技」が階段で纏を振る以外に伝わってきたらさらに高評価となっていたかもしれません。

 優秀賞「主人と神輿と私」 永嶋肇(新潟県)

選者の余計な言葉など不要でしょう。作品とタイトルから伝わってくるイメージを素直に受け入れるだけで良いと思います。あえて選者の言葉でイメージを膨らます見方を添えるとしたら「コロナ禍」。この間に何があったのか。祭りは開催されていたのか。ご主人は何と言っていたのか。そんな数年を経てご主人が好きだった祭りが目の前で開かれている。祭りの正装で微笑むご主人にもう一度祭りを見せてあげる奥様の優しさに胸を打たれました。

 優秀賞「心酔」 嶋田健次(新潟県)

人と馬、心と心が通じる時間。感受性豊かな馬は人の心を読み取ると言われますが、人は自分を受け入れてくれた馬から癒されていきます。ホースセラピーとして心のリハビリに使われたりしますが、時間帯含め、美しい光景を離れた位置から望遠レンズで切り取ったことで彼らの「大切な時間」を邪魔しなかったことが良作を生みました。美しい光景には小手先のテクニックなど不要、そのまま切り取るだけで作品になる好例でしょう。

 特選

「早く早く」 樋口八重子(新潟県)

「お化けと七五三」 小林理(長野県)

「日本髪」 小島寛明(新潟県)

「荒ぶ大地」 渡辺清一(新潟県)

「落陽」 渥美滋(神奈川県)

 準特選

「涼風」 高橋庄英(新潟県)

「闇夜の番人」 長谷川恵美(新潟県)

「厳冬の鳥甲山」 宮澤健二(新潟県)

「フライト90分前」 佐藤権(新潟県)

「feel」 田中弘子(新潟県)

「空中戦」 西巻正(新潟県)

「おい 帰るぞ」 西村美枝(長野県)

「夏のはじまり」 松澤詩織(長野県)

「入園の日」 栗山浩三(新潟県)

「春の彼岸参り」 小坂幸平(新潟県)

 入選

「肉高く舌肥ゆる」 望月貴光(山梨県)

「走る」 田山雄史(埼玉県)

「緊張感」 兵後敏博(山梨県)

「冬のドライブ」 栗本実(新潟県)

「乱舞」 丸山公(新潟県)

「慈悲の怒り」 板倉敏彦(山梨県)

「一年生になったよ」 黒澤豊子(長野県)

「新しい家族」 布施さやか(長野県)

「母鳥」 土屋芳孝(長野県)

「城壁の向こうは」 神戸幸人(長野県)

「波動」 高野栄子(新潟県)

「雨のお花見」 頴原学(山梨県)

「里山に生きる」 和木勇夫(新潟県)

「夜祭り」 齋藤都(新潟県)

「火渡り」 新井勝義(新潟県)

「元気印の人達」 坂田辰榮(新潟県)

「爆煙」 佐藤信雄(新潟県)

「首、いった~い!」 中村尚志(新潟県)

「そしらぬ顔」 明田川洋(新潟県)

「ヒロイン」 中里玲子(長野県)

「ピエロ」 加藤一郎(神奈川県)

「隠し芸」 吉田行男(長野県)

「夜空の灯」 小林勝(長野県)

「ツーオン出来るかな」 袖山哲(長野県)

「凍れる朝」 島根八重子(長野県)

「行列を待つ」 平田重模(岐阜県)

「ひとやすみ」 青山益登(長野県)

「優美なる飛翔」 朝井晴佳(長野県)

「ないしょばなし」 向山凱彦(山梨県)

「空の車輪」 金子武(新潟県)

「雲の中の絵模様」 茂野誠一郎(新潟県)

「水も滴るいい白鳥」 奥田裕之(長野県)

「明日に輝く」 碇誠(千葉県)

「巨大生物」 沼倉康治(新潟県)

「「愛と死」~終焉の絆~」 長塚響平(山梨県)

「小さな世界」 村上敏幸(山梨県)

「降雪の松林」 古田敏春(新潟県)

「収穫終わりのひととき」 大工原拓也(長野県)

「騒がしいなあ」 小菅紘宇(千葉県)

「暮れなずむ頃」 伊藤幹雄(東京都)

「至福の刻」 岩切美春(神奈川県)

「湖畔のお散歩楽しいな」 岡本洋三(東京都)

「岩と紅葉」 阪本章(山梨県)

「甲冑まとってスマートホン」 松沢淳一(新潟県)

「三ヶ月になりました」 山後一子(新潟県)

「立ち上がれ!」 田澤直美(新潟県)

「熱気最高潮」 須田幸栄(新潟県)

「白煙上がる」 浅見良夫(新潟県)

「騎馬隊」 髙添真一(山梨県)

「大きいなあ」 蕪木佳子(新潟県)

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2022/08/01
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