審査 写真家・関東本部委員 大西みつぐ
今年は各県のみなさんもおそろいで審査のお手伝いをいただき、コロナ禍になってから久しぶりに和やかな時間の中で行われました。各地のお祭りの写真なども「復活」し、季節の到来をカメラで愛でることの嬉しさが炸裂していました。もちろんまだ油断はできませんが、こうした時代と暮らしを見据え、じっくりご自分のテーマに付きあっていただくとよいでしょう。「写真」はかけがえのないものなのです。
様子からはちょっと叱られているのか、おばぁちゃんはどんな「教え」を説いているのか。田んぼの真ん中でくりひろげられる小さな「物語」に作者は目を細め、遠くから眺めています。土や水や稲とともに暮らしてきた長い時間軸がここからうかがえます。派手な色合いにすることを控え、シンプルにして説得力のあるスナップショットとしてまとめています。孫たちの表情をあれこれ想像しながら、彼らの明日に希望を託したくなってきます。
子どもでなくとも、お祭りの神事は淡い夢のようなひと時をつくります。特に宵宮のような時間は濃厚です。こうした題材に効果的なボケを取り入れる写真が少ないのが以前から気になっていましたので、この作品に心を強く惹かれました。レンズの描写力をしっかり生かしていくという基本はとても大事です。
一種の虚像ではありますが、実景よりも、このように格別に美しく感じることが多々あります。古来からの「水鏡」ということかもしれません。田んぼであればなおさら日本人と「農」の切っても切り離せない関係も加わり、アルプスの峰に抱かれ生きる人々の存在が背後にしっかり浮かびます。秀逸なフレーミング。
まるでどこかのステージ上でミュージカルでも演じているかのような設定。降り積もる雪のせいなのか、折からの美しい光のせいなのか、撮るほうも演じるほうも夢の世界に遊んでいます。彼女たちの「想像力」に長くつきあってこられたから共有できる感覚と技術力のせいでしょう。まだまだ夢は続きます。