審查委員
浅田政志 (写真家)
大西みつぐ(写真家)
清水哲朗 (写真家)
若子 jet (写真家)
佐藤親正 (全日本写真連盟関東本部委員長)
松井寛 (同西部本部委員長)
大野明 (朝日新聞東京本社映像報道部長)
浅野哲司 (同大阪本社映像報道部長)
【総評】
「全日本写真展2020」(全日本写真連盟、朝日新聞社主催、株式会社ニコンイメージングジャパン賞品協賛、全国高等学校文化連盟後援)の審査が朝日新聞東京本社であった。「身のまわりのくらしや風俗から経済・政治まで、独自の視点で『いま』を切りとる」がテーマ。応募作品5,303点から、入賞作品119点(一般の部75点、高校生の部44点)が選ばれた。
今年はコロナ禍に遭遇し、誰もが世界と自分、社会や生き方を見つめざるを得ない時間を過ごした。カメラを手にした一人一人が、家族の存在や命の大切さを見つめ直し、思い悩みつつも、自分自身の表現に挑戦した跡が多くの作品から見受けられた。
今、この時代に、他者と自分について考える機会が、写真を通して生まれたことは、希望でもある。多種多様な作品から、迷いながらもカメラを持って、今を切り開いていこうとする撮影者の意気込みが伝わってきた。
全体としては、コロナ禍や少子高齢化などを捉えた社会性のある写真が目に付いた。現状を受け止めながら、自らの視点を突き詰めて被写体と向き合い、社会現象を切り取る表現力を発揮できたか否かが、上位作品との分岐点となった。
一般の部は、コロナ禍の今をやや悲観的にとらえ、閉塞感を抱きつつ、常識の中でまとめた写真が目立った。高校生の部は、写真に勢いがあり、伸び伸びと前向きに表現を楽しむ作品が多かった。
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インパクトが強く、写真に勢いがある。祭りは形を想定して撮影しがちだが、タテ位置の構図に挑戦しており、体をよく動かしてシャッターを切っている。集中して、粘り強く被写体に迫り、撮影者の思いがストレートに伝わってくる。
青い色彩やマスクを使ったミイラのような顔に、撮影者のアイデアとセンスの良さが光る。顔全体を覆うマスクから、見たくないものや見えない脅威を感じ取れる。コロナ禍の時代を、敏感に察知した瞬発力のある表現は、見応えがある。