【審查委員】
浅田政志 (写真家)
大西みつぐ (写真家)
清水哲朗 (写真家)
若子 jet (写真家)
椙野充義 (高等学校文化連盟全国写真専門部 事務局長)
江連康晴 (全日本写真連盟 関東本部委員長)
加藤丈朗 (朝日新聞東京本社 映像報道部長)
中田 徹 (朝日新聞大阪本社 映像報道部長)
久松弘樹 (全日本写真連盟 総本部事務局長)
※敬称略、肩書は審査当時
「全日本写真展2023」(全日本写真連盟、朝日新聞社主催、全国高等学校文化連盟後援)の審査が朝日新聞東京本社であった。「 身のまわりのくらしや風俗から経済・政治まで、独自の視点で 『いま』 を切りとる 」がテーマ。応募作品5,491点から、入賞作品99点(一般の部55点、高校生の部44点)が選ばれた。
【総評】
全体的に生活の細かな部分が分かる、家族や友人といった被写体をとらえた作品が多く、コロナ禍でも明るく、工夫していることに驚く。一度はあきらめかけてしまった写真に、改めて取り組む様子が伝わってきた。
社会の事象の今をどう表現するかではなく、コロナで閉塞感にさいなまれたのか、セルフポートレートが多くなった印象だ。色の見せ方やぼかしなどの手法で、新しい作品に仕上げる工夫が多くに見られた。身近な被写体だからこそ目移りせず、深く取り組めるようになったと考えられる。
高校生の作品は、被写体と向き合おうという思いの強い作品が上位となった。例年、前例を踏襲する作品が多い傾向だったが、今年はオリジナリティーにあふれる作品が増えた。部活動の中では撮影時間が限られるだろう。そこから少し離れて、人やまちと積極的にコミュニケーションを取りながら、「個の目線」をさらに鍛えて欲しい。
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先立った妻を思い出しながら、いまなお自分が一緒に生きていることを素直に表現した。生活の一部が写り込み、日常も感じられる。もう一度、結婚式を挙げているような不思議な写真で、寂しさだけでなく、温かささえも伝わってくる。心情の変化か、手に微妙に写るマスクで、今を切り取ろうとの気持ちも伝わってくる。
はじけるような笑顔の子どものポーズには余裕が見られ、小さな子どもにこんな技ができるのか、と思わせるような瞬間を捉えた。躍動感があり、空の色も気持ちよく感じられる作品は、多くの人が撮りたいと思っていてもなかなか撮れない作品となった。
馬とここまで密に生活していることはめったにないだろう。写真を通して、普段は見られない生活を表現している。同じ目線で撮影するなどの工夫をしながら、被写体の良い瞬間をとらえようとしている様子がうかがえ、ずっと撮り続けていることが分かる作品だ。
元旦にいつも髪を切っているのだろうか。とても優しい背中が感じられ、2人の関係性が想像できる。夫婦愛を訴えかけているようで、見るものに2人が謳歌してきたであろう人生をふつふつと感じさせる。外での撮影は季節感もあり、天気も気持ちも晴れた写真になった。
スポットライト的な光によって、劇場のシーンが再現されているようだ。モノクロ写真の中で切々とした情感が、きっちりと表現されていることが伝わってくる。戦争に関わるものが減っている中で、リアルに見られる場所で、背中で物語っている作品となった。
被写体そのものは特別ではないが、インパクトの強い作品になった。水田の苗と、水面に映った顔が重なる様子を作者の視点で封じ込め、こんな写真の楽しみ方があることも伝えてくれた。1人が重なることはあっても、2人は無いだろう。嫉妬すら覚えるような良い条件を見つけだした。天気が良すぎず、映り込んだ雲も効果的だ。