第72回朝日写真展には、全国37都道府県から309人、1283点(組み写真は1点とみなす)が寄せられました。審査の結果、朝日大賞には吉野聖夫さん(三重県鈴鹿市)の「雄たけび」が選ばれました。入賞作品をご覧ください。
72回の歴史を数える朝日写真展。しっかりと「私の視点」で応募された作品を見た。
自由な発想で何げない日常を切りとった優しいまなざしの作品が多く、和やかな気持ちで写真を審査することが出来た。
昨今、デジタルカメラの飛躍的な進化、高感度、高画質、的確な露出、フォーカスの精度など、今まで写真家が究極の一枚を撮るために技を駆使して鍛錬して撮影していたものが割と簡単に撮れてしまう時代になってきた。しかし、審査していてデジタル的な利点をうまくいかしていない作品が多いことが気になった。写真において従来の暗室作業でも同じなのだが、モノクロなら黒の締まり、意図する発色やトーン、印画紙の選択やプリントの焼き込みなど、撮影以外にもこだわるところがあるはずだが、出品作品では逆にデジタルの粗みたいなものが目立ったものが多かった。
その中で入賞作は日頃からカメラを携え日常の決定的瞬間に備えた写真が多く、構図やレンズの選択を駆使して撮られた秀作があった。
写真家の意思によって自分の中にある世界を見つけ出し映し出された写真は、見る者の想像力を刺激して面白い。いろいろな写真の効果を知った上で他者が気づかない今までにない瞬間の写真が、今後数多く応募されることに期待する。もちろん写真を人に見せる時の「写真のオメカシ(クオリティー)」も忘れずに。百々 新