審査 関東本部委員 小林芳夫
金桜神社で行われた恒例の春季大祭で奉納された各種舞などの中で、特に目立って観客の目を魅了したのがこの「戸隠明神の舞」のようです。この明神の赤い装束で登場した迫力ある姿をタテの構図で大きくしっかりと捉えました。そして動きの決まった瞬間をすかさずキャッチしたので見応えのある作品となりました。
境内のにぎやかな場所を離れて、作者は当日の様子を高みから何とか総体的に撮って伝えようと考えたのでしょう。そうしたアイデアでこのアングルを探し選択されました。神社の裏手の高い位置から境内を俯瞰して、ちょうど神社の祭りの最中をうまくまとめて撮られました。桜が咲いた春日の好天と環境の中で、境内の祭礼の様子が直に見られます。画面下を少しカットすると画面がより引き締まって良くなるでしょう。
お祭りの撮影に出かけて撮った作品の中では異色の作品ですが、まさに作者の視点と感性がこの傑作を生んだと言えましょう。神社の建物か、或いは境内のどこかにある老大木に注目し、そこに宿る木霊を感じ、そこを人面のように切り取リアート作品と仕上げました。画面目いっぱいの構成や色調も含めて申し分ありません。老木が枯れても尚生きているような不思議な木霊を表現されました。
毎年開催されるこの神社の春の大祭にあたって、男女を問わずに地元の多くの関係者が日ごろから準備や練習をし、古来から受け継がれてきた伝統の能三番叟を喜びと緊張をもって引継いでいます。この晴れの舞台で共にしっかりと披露している姿を過不足なく捉えており、各人物像がとても興味深いです。画面構成(絵作り)も全体にピントもよく効いておりお見事です。
この神社のご神木が金櫻とうこんの櫻のようで、これら2本の桜の大樹がちょうど満開となり、撮影会にはちょうど格好の被写体となったようで、応募作品も奉納舞等の次に多くありました。その中でもこの作者の作品が素晴らしい出来でした。主役の満開の両桜を堂々と中心にし、下部に引き立て役の赤い柵や格好の人物もうまく配して、見栄えのある堂々としたプリント作品に仕上げた手腕は確かです。
「神事」 向山凱彦(甲州市)
伝統あるお祭りの開始を、緊張感をもって告げる神事を行う神主の様子がうまいタイミングで捉えており、それが見る者に伝わってきます。周囲のさわやかな空気感や主役の息遣いも、しっかりしたプリントの写真から見て受け取られます。
「これから お参り」 依田辰男(南アルプス市)
題名通りの神社に向かう夫婦の、ちょうど手水所でお清め中の礼儀正しい姿に目を留め、すかさず共感を覚えてスナップされた静かな場面です。画面全体に周りをもう一回り強程トリミングしてプリントすると、主題の意図がよりはっきりと表現されるでしょう。
「寂しい夜桜」 並木信明(甲府市)
今回審査で選んだ中で唯一のモノクロの作品でした。モノクロプリントすることは今や少数派になっているのは、プリントそのものがカラーと違い難しい作業なので、かえって新鮮な思いがします。上に取り付けられた多くの明かりの電球が邪魔にならず、よく咲いた桜花とも調和して上手く撮れました。撮影の時間帯も良かったので、こうした夜桜の作品が撮れたのでしょう。モノクロだけに幻想的で雰囲気のある情景が表現されています。題名は「夜桜」だけの方がよいのではと思われます。
「御崎両神の舞」 角田東洋男(笛吹市)
奉納舞の一つですね。二人の舞手が別々ではなく相組んで舞を舞っている姿をうまく捉えていて、主役の舞手の前進する動きのタイミングが決まっています。被ったお面がまるで生きた人間のように生き生きしているのも素晴らしいです。