審査 写真家・関東本部委員 桃井一至
「夜明けのハス(3枚組)」 田中剛(高崎支部) 夜明けから朝にかけて咲くという蓮。朝焼けで統一したトーンのなか、三様の蓮が並びました。 構図は似ていますが、焦点距離などが違うため、飽きることなく目を楽しませてくれます。補助光とのバランスもうまく調和が取れています。
「満月の夜に(3枚組)」 高橋淑子(高崎支部) 少々荒削りな構成ですが、その世界観に引き込まれる作風です。古びた建物やザラザラのノイズだらけの屋根(かな?)。そして、赤いハイヒールの謎の人物。なにかが起こりそうで胸がざわつきます。赤い靴の写真は、夜でなさそうですが…。
「石段のシルエット」 関谷文夫(高崎支部) お二人での旅行先でしょうか。子供の頃に夕陽で同じように遊んだ記憶が蘇ります。フォトジェニックな光景にプラスして、お二人が入ることで画面が締まりました。光を見つけた瞬間に浮かんだナイスアイデアです。
「行列の人」 近藤義明(桐生支部) 全体像を見せると説明的になりがちですが、あえて足元中心に切り取ることで、見る側の想像力が膨らみます。皆さんの着物が黒で、模様も艶やか。一面の芝生に足並みが揃っているのも良いですね。構図が少々傾いていますが、動きを感じさせてくれます。みなさんの表情が気になります。
「夏の風景」 塚越邦明(高崎シティクラブ) 青空と雨傘は本来対照的ですが、これだけカラフルな傘が一同に並ぶと見ごたえあります。木漏れ日からも、日差しの強さも感じられます。贅沢を言えば、空を見上げる人物が入るほうが、より臨場感あふれたかもしれません。ふと思ったのですが、これほどカラフルな傘でも、地面の影には色はつかないのが不思議です。
「森の妖精たち」 大島正俊(高崎シティクラブ) 大きな森の中では見落としてしまいそうな、きのこ類。寄り添うように並ぶきのこは、まるで家族のようにも見えます。足場の悪い場所で小さなものをしっかり大きく撮るのは、なかなか骨の折れる作業ですが、しっかりした技術でピントとブレもなく安心して見られます。 背景のボケもうまく活かされました。
「落日前」 島谷幸平(高崎シティクラブ) 秋らしいすじ雲ですね。青空に伸びる雲を見ていると、こちらまで清々しさが伝わってきます。夕陽に染まる雲から青空へのグラデーションも美しく魅了されました。シルエットにした地上を少し入れることで、空の広さをいっそう感じます。
「優美な世界(3枚組)」 石原圭子(高崎支部) 蓮の三部作で3点ともにシンプルな構成ですが、大きさやアングルなどで強弱をうまくつけてあるために単調にならず、しっかり蓮の存在感が伝わってきます。また花びらの痛みや汚れも見られず、美しい蓮に恵まれたのも良かったと思います。水辺の花にも関わらず、アップの写真は背景も暗く落とし、どのように撮影されたのかが気になります。
「ヤブからコーン」 黒崎守輝(高崎シティクラブ) キツネ姿の女性をなまこ壁に追い詰めたシチュエーションがおもしろいですね。そして、女性の手元は、しっかりとキツネのポーズ。笑顔が素敵で、撮影する側とコミュニケーションが取れているのも伺いしれます。画像加工で周辺四隅を白くすることで中央の人物が引き立たせているのも、効果的でした。
「くるま車クルマ」 細野祐一(高崎支部) 解体に運ばれていく途中でしょうか。お役御免となったクルマたちですが、下のクルマのテールランプはつり上がり、怒っているようにも見えてきます。リサイクルされて、第二の車生を歩んでほしいものです。右側の青いクルマは対比のために入れたのかもしれませんが、左側上下の2台で構成するほうがインパクト強く、ストレートに伝わります。
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