全日本写真連盟

全日本写真連盟例会2021第1回結果発表(自由部門)

自由部門審査講評 ハービー・山口(写真家・関東本部委員)

 優秀作品「あこがれ」 横山 周作(大阪府)

上手です。舞妓さんの視線がお嬢ちゃんにいって、お嬢ちゃんも舞妓さんの笑顔に呼応している。京都とわかる背景、いい構図でムダがない。足下の下駄のディテールもいい。なにより全員が笑顔を交換している素晴らしいシャッターチャンスを捉えました。

 優秀作品「体験広場」 中嶋 幸晴(埼玉県)

建物の壁面にバスケットボールの絵が描いてあり、屋上にバスケットゴールがあるという面白い建物を利用しました。少女のシュート場面を絶妙なタイミングで合わせて、大変うまい構成をしましたね。

 優秀作品「涼しいよ~」 柳川 武春(神奈川県)

馬が海の中でいるという珍しい状況ですね。馬上の女性がみなさん美しく、海の中の子どもたちの表情が、冷たいけど爽やかで気持ちよさそうな様子が素晴らしいです。難を言えば、中心人物が真ん中に寄りすぎているので、空気感を持たせるように上下などに空間を持たせるといいでしょう。

 優秀作品「福を招く」 関野 敏文(愛媛県)

朽ちた土壁や家屋は時間の流れを物語っていて興味深いです。昔ここで商売をなさっていた方の精神性が、招き猫から出ています。朽ちた壁と招き猫の組み合わせが絶妙です。僕の好きな写真です。

 優秀作品「夏至のころ」 中村 金次(福岡県)

逆光は非常にドラマチックですね。周囲は当然暗くなるわけですが、それを無理に補正せず、口元も分からないような不気味で、真夏の蒸し暑く不愉快な気分を象徴しています。特殊なポートレートとしてインパクトがあります。

 優秀作品「みどりの国へ」 横山 美智男(神奈川県)

素晴らしいのは滑り台に落ちたお子さんの反射像ですね。よく見ると左右と上下に5つも反射像がある。横位置で撮っても面白いね。緑の中で映える服のピンクも効果的です。映った自分の顔を見つめる表情もいい。お孫さんですか。おじいちゃん、いい写真を撮りました。

 もう一歩「踊る児(おどるこ)」 (岐阜県)

見下ろしてる感じが、いまひとつお嬢ちゃんたちが解放されていない写真になっています。撮影者がしゃがむか、お嬢ちゃんたちの影がせっかく地上に落ちているのでそれを利用して、縦構図で撮ると、お嬢ちゃんたちの高揚感が出てくるかな。る影を利用して、できればこの道路のずっと先のほうまで入れるような構図だと、すごくポジティブな写真になりますね。

 もう一歩「日曜日の公園」 (栃木県)

スローシャッターで微妙にぶれていますが、もっと極端に、三脚とまでいかなくても、ベンチの上などにカメラを固定して、10秒くらい長時間露光すると面白い。大きくぶれる手足、まったくぶれないカップルや木、というように差が顕著に表れると思います。桜をほとんど切って、水面をもっと大きく写して長時間露光する。遊び心のある写真になります。

 もう一歩「独り旅」 (大阪府)

逆光の伸びやかで素敵な夕方なんですけど、オートバイとライダーが画面の真ん中すぎて、あたり前になってしまっていますね。水平線を傾けているのは賛成しますが、太陽がだんだん低くなっているのだから、影が地面にもっと長く伸びてきているはずです。縦構図にして、上は空、真ん中は実体のオートバイとライダー、下はディストーションされた影、というように撮ったらもっと造形的にインパクトがあったでしょう。

 もう一歩「通過待」 (神奈川県)

もったいないですね。これは電車が通り過ぎるまで待つべきでした。走り抜けた瞬間、ぶれた電車の向こうに踏切の先の風景が見えるというように。電車が入ることで画面がずっと引き締まると思います。

 もう一歩「朝の散歩」 (兵庫県)

園児を連れて土手の小道を散歩しているのどかな風景ですが、人があまりに小さすぎますね。フレーミングの問題なんですが、左の暗い影の建物をちょっと整理すると、春先の爽やかさが出てきて、画面ももっと締まるでしょう。

 もう一歩「待ち合わせと通行人」 (東京都)

表参道、いい光が壁画あたって美しいです。街の雰囲気を入れようとして広角レンズを使ったんだと思いますが、壁面をもっと大きくして、まわりの街を省略し、壁画と寄りかかっている人だけのドラマにするのもいいかな。季節や時刻によって通行人の服や表情が違うから、街全体よりも絵と人と光の関係にテーマを絞ってたほうがよかったと思います。

 もう一歩「今夜はカレーがいいな」 (徳島県)

せっかくの夕日、地表にこの自転車の影が映ってるはずなんですよね。それを利用したほうがもっときれいになると思います。夕日とシルエットだけだと、ちょっと単純なので。またはスローシャッターでぶらすとか工夫をしたら、また違う写真になるんじゃないかと思います。

 もう一歩「金魚・金魚・金魚」 (長野県)

摩訶不思議な舞台セットが非常にいいんですけど、踊ってる人と金魚の画面上の割合が50対50になっていて、相殺してしまっている気がするんですね。どちらかに主役を与える撮り方のほうがいいと思います。

 もう一歩「気勢を上げて」 (愛知県)

これ大変ユニークで、いい写真を撮りました。お子さんたちが得意になって、拳を挙げて周囲の人たちに何か声を発して元気いっぱいです。問題は構図です。お子さんたちが画面後ろから右に回り、左に流れています。これを縦位置で撮ると、手前のお子さんから奥行きが撮れ、人数や、列がちょっと弧を描いて歩いてるという、面白い形が写ると思います。

 もう一歩「願いごと」 (東京都)

要素としては、満開の桜、おみくじを結んでる真剣な顔、結ばれた無数のおみくじなんですけど、この3つが独立してせめぎ合っていて散漫になってしまっています。これに主役、脇役、そのサポート役というように順位を付けるといいでしょう。お嬢ちゃんの真剣な顔を撮りたのであれば横顔、もしくは後ろから、もしくは望遠レンズで目にピント合わせて、おみくじはぼかす、などです。

 もう一歩「夏の思い出」 (北海道)

船首から船尾まで1枚に収めて、平和な観光地のいい写真ですね。ただ海の向こうはどんな景色の中だろうという、状況説明があってもいい気がしますね。逆に海を削って、船の中かどうか分からないぐらいにして、ミステリアスの中に、はじけんばかりの人を閉じ込めるっていうのもいいですね。観光地のいい写真で終わっていて、それ以上いくには観光地ということを伏せ、どこか説明不足にするという行為が必要かな。説明不足にすることで、抽象性が生まれて、見る人の想像力をかき立てる結果になるのです。

 もう一歩「愛読者」 (神奈川県)

これ面白い状況ですね。後ろに強烈な文字のメッセージがある。ただそれが強すぎて、手前の男性が食われています。シャッターチャンスをもうちょっと待って、タダ読みに群がる漫画ファンの心境が分かるように、もっと人がいっぱいいたり、漫画が読めない猫ちゃんが退屈そうに赤い床に横になってるとか、もう一つ登場人物がほしかった。そうすると素晴らしい写真になるかと思いますね。

 もう一歩「ペガサス」 (神奈川県)

これ順光でカメラマンの後ろから日が当たってる状況ですね。せっかくの美しいガラスなんで、逆光から撮ると、キラキラきら光ると思うんですね。木の後ろに回って太陽を入れたら、このトナカイのガラスがもっときれいになって、いい写真になるかなと思いますね。

 もう一歩「ディスタンス」 (北海道)

なんでも距離を置くという、今の時代のいいドキュメントです。ただもう少し引いて、右側の足を組んで待ってる人の横顔を写し、窓際の男の人の後ろ姿と合わせて、所在なげな感情を表現したかったですね。膝だけで切ってしまうのが、ちょっと中途半端でした。あえて顔が写らないようにしたのかもしれませんが、シャドウにしたり、鼻筋だけ撮るのなど工夫をすればいいでしょう。

 もう一歩「それぞれの神前」 (大阪府)

階段の横線、柱の縦線の格子の中に三組がいます。この場合、左の人をトリミングして、格子の中で二組を対比させた方が画面がすっきりするんです。三組いるせいで、ちょっと散漫になってしまっていますね。

 もう一歩「カメラ目線」 (神奈川県)

作者を見る犬と、我が子を撮影するお父さんを見る子供と、興味の対象が二つのベクトルに別れている面白い写真です。ただ、ちょっと寄りすぎですか。もう少し引いて一生懸命撮っているお父さんも入れて、画面を説明してもいいのかなと思います。

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2022/08/01
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