2018年秋に予定されていた撮影会が台風により中止になったため、2019年元旦から1月10日の期間中に、埼玉県川越市を自由に撮影してもらい、作品をコンテストに応募してもらう形式となりました。
審査 総本部事務局長 勝又ひろし
この写真の面白いところは、福銭を撒く人の顔も、もらう人の顔もほとんど写っていないところです。撒く手、宙を舞う福銭、取ろうとする手のみで構成された画面からは、のどかなお正月の風物詩というよりも、むき出しの人間の欲望とか、飢餓感を純粋化させたような不安感を覚えます。モノクロにしたらもっと凄みが出るでしょう。
見事な構成です。大胆に紅白幕で画面を覆い、右の上下のコーナーに若者とマンションを覗かせる。「ちょっと殺風景な街角だけど、とりあえず紅白幕で隠して正月っぽくするか」みたいな、都市でのお正月の迎え方をシニカルにとらえた作品です。
陽が下がりかけてきたのであわてて穴蔵に帰る、巫女さんに化けたキツネ、といった妄想を抱く写真です。どことなく警戒気味の表情で、足早に見えるステップで歩く巫女さんを、木々、絵馬、黒い地面が囲んでいて、ちょっと背筋がヒヤッとする「あの世感」を漂わせています。
今時珍しいデパート屋上の小さな遊園地は、遊んでいる人がどんな楽しそうにしていても、寂しくて空虚な印象を抱いてしまいます。作者の意図するものではないかもしれませんが、この作品も、抜けるような青空や、空調のダクト、テントウムシのカートがその印象をいっそう濃くしてします。
なにかしらダルマが写っている写真が全体の3分の1あった中、ダルマの持つ滑稽さ、傍若無人さをうまく撮影技術で表現した作品です。ゴースト、フレアを無遠慮に画面に入れて、足のないダルマが人間を踏みつけるように駆けていくような、不条理な錯覚を抱かせる作品です。