審査 写真家・関東本部委員 熊切大輔
まずは皆さんのレベルの高さに驚かされました。
その活き活きとした動きと表情は、今までの閉塞感の強い状況からそのストレスを発散させてくれるような明るさを感じました。
バラエティに富んだ作品群は見応えが抜群で、どの作品が上位に来てもおかしくない、そんな感想を持ちました。
自由の部 自由な発想で捉えた現象や心象、社会生活の様相等を表現したもの。
課題の部 「昆虫」及び蜘蛛など虫類全般。
ネーチャーの部 自然や風景、動植物、花などの生態等。
高校の部 若さ溢れる自由作品。
なんと言っても情報量の多さにまずは驚かされました。かもめの大群に囲まれる親子。その動きと表情はなんとも楽しそうです。それを収めるカメラに一羽の鳥が大接近。広角レンズの表現を活かした迫る被写体の迫力は人物と目があっているようにも見えました。ユーモラスな表現が楽しい作品となりました。
迫力たっぷりの作品となりました。豪華な山車をバックに跳ねる男性の姿が素晴らしい陰影と立体的な光で描かれています。その動きは力強く、山車の飾りとうまく重なり、まるで仁王像のように見えます。構図のバランスもよく見ごたえのある作品となりました。
海の夕景を背景に美しいシャボン玉が浮かんでいます。それを突っつくためにジャンプをした少年の動きも躍動感たっぷりで素晴らしいですが、シャボン玉が割れる瞬間を見事に捉える事ができています。すべての条件がドンピシャのタイミングで表現できています。
カマキリの子供たち。その行進の様子を捉えているのですが、漫画チックなくらい素晴らしいタイミングで撮影することができました。こんなにもキレイに整列するものかと感心してしまいました。背景のボケ味も美しく活かした構図になっています。
水すましの様子が写し出されています。なにより滑らかなその水面が構図の中にデザイン的な美しさを描いています。その水面を使い、たっぷりとした余白を活かした構図は、どこか静けさを感じる表現となっています。水すましの配置も絶妙です。
カマキリがシルエットで浮かび上がるその姿は、逆光を活かした構図になっており神々しささえ感じるものとなっています。シルエットでの表現はその向きが肝心です。カマキリの頭や体のフォルムがしっかりと見える良い向きで捉えることができています。
朝靄に煙る湖畔の美しい姿が切り撮られています。水面と空が構図的に気持ちよく配分されています。そこに力強い朝日が水面を美しく照らす様子も描かれており、絵画的で非現実的な神秘性を感じました。中央のシルエットもアクセントとなって効いています。
非常に珍しい瞬間を捉えた作品なのではないでしょうか。美しい蓮の花の上に止まった鳥が蜘蛛の糸でしょうか?くちばしで操るその姿はまさにあやとりをしているように見えます。足もうまく使っておりこんな姿をよくぞ写真に捉えられました。
モンゴルの広い平原にゲル(テント)があり、それを構図に入れることによって撮影地をしっかり表現しています。その上空を一筋の火球が光の尾を引きながら横切った瞬間を見事に捉えました。天の川も写っており非常にドラマチックな光景を写すことができました。
被写体を表現するとき私はよく前ボケを使います。そうすることによってより奥の被写体に目線が誘導できるからです。本作はそんなテクニックを使いながらブレもうまく活用し、祭りの動感をうまく演出することができています。
二者の繋がりの深さがひと目で理解できる、表情豊かな作品となっています。その絶妙な距離感を写したタイミングの良さもさることながら、左側に空間を開ける構図が広いプールで二人きりの時間を楽しんでいるような表現になったのではないでしょうか。