第53回新潟県写真サロン
審査 写真家・関東本部委員 秦 達夫
【総評】
53回もの歴史がある新潟県写真サロン公募展の審査をさせて頂けたことに感謝と敬意を持って審査させて頂きました。このコンテストの裏テーマは「静と動の流合」なのでは?と思いながら審査を進めて参りました。それだけ、動感と静寂を織り込んだ作品が多かったと思います。写真は時間を止める芸術な訳ですが、見る人の心境や環境によって脳内で静止画が動きだします。逆にもしかりな訳です。その写真独特の性質を上手く活かした応募が多く楽しく審査させて頂きました。
まさに静寂の中に動感を埋め込んだ作品ですね。黒い背景にシンシンと降る雪の中に佇むサギは静寂を司るモチーフです。そこに1羽のサギが降り立つ瞬間を写し止める。ここに動感が生まれ、物語が始まります。静と動を組み合わせた素晴らしい作品です。
躍動感がある作品ですね。堰堤を行きよい良く遡上して行く鮭は言うまでもなく動感に満ち溢れたモチーフなのですが、本作品は朝日ですかね?夕陽ですかね?オレンジ色の光りに照らされて動感にプラスアルファの要素を盛り込んで仕上げていることが良かったです。
「角付」は本来福をもたらす「祝言人」(ほがいびと)ですから陽気なものだと思うのですが、スローシャッターで風雪を流し写し止めることで雪国新潟の特に厳しい冬の世相を表しているように感じました。風俗を写し出すことに成功していますね。
秋真っ盛りを告げる銀杏の黄色に斜光が差し込み、秋の彩りを引き出しつつ穏やかな時間を捉える事に成功しています。そこに自転車に乗った農婦の方を小さく配置することで銀杏のスケール感を表しています。穏やかな中にハッキリとした主張を込めた作品です。
とてもほのぼのする作品だと思います。昨今はカメラ性能がいいのでカッコいい作品や綺麗な作品は簡単に撮影することができる時代です。そんな中で円錐の柱に歪みながら映り込む友人の顔をストレートに写し出した、その作風が高校生らしく感じます。何気ない日常の中の一瞬を垣間見たように思います。