朝日新聞社は1983年に、豊かな自然を後世に伝えるため「21世紀に残したい日本の自然100選」を、国立・国定公園以外から選定しました。この趣旨により第1回写真コンテストも開催しました。第6回からは国立・国定公園も含めたあらゆる日本の自然へと対象を拡げました。
27回目になる今回は「いつまでも守り続けたい日本の自然」をストレートに表現した作品を全国公募し、4,162点から101点が入賞しました。
最優秀賞は、藤原幸子さんの「大自然の使者」に決まりました。このほか、審査委員賞6点、優秀賞18点、入選30点、都道府県一賞46点の合計101点の作品が選ばれました。
【総評】
昨年同様、レベルの高いコンテストだった。応募者がそれぞれ自分の写真を撮る努力をしているのが作品から感じられた。デジタルの時代になって、自然の写真が変わってきた。生き物が撮りやすくなったという印象を受けた。
また、風景に人が介在していたり、クローズアップがあったり、テーマに対する題材が広がり、バリエーションが豊かになったのは新しく良い傾向だ。半面、明らかに画像加工の行き過ぎた作品が見受けられたのが残念だ。
「いつまでも守り続けたい日本の自然」というテーマを念頭に、きちんと被写体に向き合って、素直にストレートに伝えることを大事にして欲しい。
野生の生物が自然の中で生きている姿を象徴的にとらえている。環境の取り入れ方がうまい写真だ。川の流れている動感がすごく良く、渓流の音が聞こえてきそうだ。その音と動感、カモシカの動かない一瞬をうまく撮影した。また、葉の群れが心地よく、奥入瀬という最高のシーンにカモシカがいてくれたのがすばらしい。撮影者が何に感動し、シャッターを切ったのかが興味深い。誰が見ても分かりやすく、残したい日本の自然にふさわしい作品だ。
シャッターを13秒も開けた長時間露光と、600ミリという長いレンズで桜島の火口を狙い、光跡によって噴火の状況をうまく写しだした。私も火山を撮影したことはあるが、こういうふうに撮るのはなかなか難しい。火山の象徴的な部分がよくとらえられている。
鳥の目がものすごくきれいだ。また構成力がしっかりしている。モノクロームの作品が少なかったので、これからのモノクロームの自然写真の可能性を期待して選んだ。撮影意図をしっかりさせて被写体をとらえている。またどこに感動したかという気持ちがはっきりしていないと、このような完成度の高い作品はできない。
600ミリのレンズでトキをしっかりととらえている。トキ色に写すのはなかなか難しい。だが、その色が出ている。光のとらえ方がうまい作品だ。日本のトキは一度絶滅しているが、自然を復活させたいという願いが写真に込められているような気がする。
朝露がぎっしりついているトンボ。複眼が、凸レンズの役割を果たしている水滴を通して写っているのがすごい。撮影者はよくわかっていてそこにピントを合わせ、クローズアップで撮影している。あまり見たことのない構図で、新しい視点という意味で良い作品だ。
非常に自然豊かなのどかな場所を選び、車両、駅名板、人の配置などもよく考えた作品だ。なおかつ車両のヘッドランプも水面に映っている計算され尽くした画面構成がすばらしい。このように生活感のある風景は残したいものだ。
自然のものに対する感覚は、驚き、身近さ、荘厳などとあるが、この写真はユーモアがあり、非常に感情的に訴えてくる力がある。技術的に凝ってはいないが、自然に対するいとおしさ、かわいさが感じられるところを評価したい。