全日本写真連盟

「報道から見た写真の世界」大野明・朝日新聞映像報道部長が講演

大野明・朝日新聞東京本社映像報道部長
 

 12月16日、東京・築地の朝日新聞東京本社の浜離宮朝日小ホールで、「報道から見る写真の世界」と題して大野明・同社映像報道部長によるトークショーがあり、報道カメラマンは普段どういう風に考え、どんな写真を目指しているか、四半世紀に渡る自身の現場体験を踏まえて語った。ナビゲーターは写真家で全日写連関東本部委員の佐藤仁重さん。佐藤さんが毎年主催している「クリスマス合同例会」の特別イベントで、参加した全日写連会員およそ250人はふだん慣れ親しんだ写真とは異なる「報道」というジャンルの写真世界に熱心に聴き入った。 まず、自身が取材した営団地下鉄日比谷線の事故(2000年3月)、JOCの放射能漏れ事故(1999年10月)、阪神大震災(1995年)、アテネ五輪(2004年)、イラク戦争の直前の日常、アフガニスタン従軍取材、日曜版で取材した米・ワイオミング州の朝焼けなどの画像を次々に映し出した。
 大野さんは1966年ニューヨーク生まれ、早稲田大学を卒業後、90年に同社に入社。国内外の事件・事故、災害、スポーツなどを取材し、1998年には交流人事で日刊スポーツに出向、2003年にはニューヨークのAP通信社で半年間、ニュース取材に携わった。
 中学、高校、大学とレスリングに熱中し、写真部にいたり、写真を勉強したりした経験はない。強いて言えば「ユージン・スミス」の作品に出会ったことと、「ならず者」のフォトジャーナリストが紛争地で奮闘する映画「サルバドル」に衝撃を受けたという。就活時はバブル経済の最盛期で企業から引く手あまた。大学の就職科で目にした朝日新聞の会社案内の「ぼくの先輩の中にフィルムの入れ方をわからないでカメラマンになれた人がいる」という記事に「勇気づけられた」という。「フォトジャーナリズムへの高い志も、写真的なバッググランドもあったわけではない」と意外な言葉が飛び出した。

トークをする大野部長と佐藤さん
 入社1年目の暗室作業。知識がないからプリントの「硬い」「軟らかい」がわからず、「ねむいってなんですか」と聞いたら「お前はそんなこともわからないのか」と怒られたという。
 デジタルカメラ以前で、報道カメラマンにとって最も大切な技術はピント合わせ。皇太子ご成婚では小和田(雅子さん)邸にスポーツ取材にすぐれたピント合わせの名手ふたりが配置された。「ピント技術というヒエラルキーで仕事が回っていたので、いい仕事を任されるにはピントをよくするしかない」と休日には人の歩く姿や走る車にピントを合わせる「特訓」をした。今の若い部員にそんな苦労話をしても通じない。ピントはオートで、出稿はプリント不要の電子データ。暗室作業や、ピント合わせの「特訓」の日々はもはや「神話」の世界だ。
 入社5年目の95年、大阪写真部時代に阪神大震災に遭遇。ピント問題はそろそろ克服してきて、報道カメラマンとして自信がついてきたころだ。しかし、現場に入って一所懸命に取材するがうまく撮れない。なかなか紙面に写真が載ることがなかった。路上に遺体が並んでいる。すごい光景なのに、わずか2、3日取材しているだけで、それを「見慣れてしまって」「勝手に消化してしまった」自分がいる。現場に慣れてしまっているのだろうか。当時、スイスのレスキュー犬が生存者を探す様子などを取材していた。短期的には新聞のネタになるが、「何か大きなシーンを外しているのではないか。自分自身の本当の思いと折り合いがつかなかった」という。「敗北感」がつきまとい「悔しかった」。
そして2週間が経過する頃、「状況」と自分が「伝えたい」ことが少しずつ近づいてきた。自分はいま関西に住んでいる。東京からやって来たカメラマンはまず現場に入って自分が見た「驚き」を写せばいい。自分は地元の生活者の視点で撮ろう。生活者は何に困っているのか。地震で粉じんが舞う街の様子や「危険な場所でも平気で通り道になっている、この異常さ」を伝える。チラシの表紙写真は、悩みに悩み、もがいていた時に撮った写真で、自身にとって「災害取材の原点」だと話した。
 西部本社(福岡)にいた2001年、ニューヨークの9・11テロを取材。テロ被害直後のニューヨークのマンハッタンは「世界中で一番」カメラマンがいるところ。ジェームス・ナクトウェイなどの一流のフリーランスや地元の世界的通信社。そのまま勝負しても勝ち目などありやしない。そこで思ったのは「白いご飯を箸(はし)で食べる日本人が見て、感じたことを撮り続けるしかない」と。大野さんはそのひと独自の視点でレンズを向けることの大切さを強調した。
 ナビゲーターの佐藤仁重さんは「報道写真のお話には、趣味として写真を楽しむ会員のみなさんにとってもたくさんのヒントが詰まっていたのでは」と有意義な時間を締めくくった。

この阪神淡路大震災の写真が大野部長の「災害取材の原点」という

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