第16回全日本モノクロ写真展(全日本写真連盟関東本部、朝日新聞社主催)の入賞作品79点が決まった。全国から544人、3050点の応募があった。審査には写真家の清水哲朗さんと佐々木広人・アサヒカメラ編集長があたった。
■総評 想像力かきたてられるか 写真家・清水哲朗さん
モノクロ写真は色情報がないぶん、見る側の想像力をいかにかきたてるかが勝負だ。撮影者は光と影で立体感を作りつつ、被写体が輝く一瞬の世界を見極めてシャッターを切らねばならない。良い写真ほど臨場感があり、その前後の光景まで目に浮かぶ。
プリントワークや用紙選びも重要である。インパクトを狙って周辺を暗くした作品が多く見られたが、上位は豊かな階調とイメージに合った用紙で被写体を魅力的にしていた。
こうした親子の姿、人間を被写体にした作品では見慣れているが、被写体がサルになっただけで強烈なインパクトを与える。被写体との向き合い方が作品の行方を左右するという好例だ。
モノクロ作品の審査では色彩の美しさが排除されるため、光と影、構図のとらえ方がシビアにチェックされる。その点ではほぼ満点。上質な木版画や影絵を思わせる画面構成力が目を引いた。
無駄のない背景。滴り落ちる酒のシズル感。ほどよく黒潰れした斜め後ろ姿……作者が伝えたいことがシンプルに描かれている。潔い作品は多くの共感を生み、高評価につながりやすいのだ。
構図自体は実にシンプル。だが、空と大地の繊細なグラデーションをしっかりとフレームに収め、見事なプリントで階調豊かに表現している。この表現の緻密さはみなさんに学んでほしい。
背景や人物に都会っ子の「今」が凝縮されていると感じた。木村伊兵衛、土門拳が描いた「昭和の子供たち」の現代版と思える街角スナップの傑作。