全日本写真連盟

第5回東北写真サロン

審査  写真家 小林紀晴氏

総評 
 東北地方には10代の頃から、写真を撮るために足繁く通っています。生まれ育った長野を別にしたら、国内ではもっとも写真を撮りに行っている場所です。ここ一年だけでも6、7回訪れました。
 ですので、今回初めて東北写真サロンの作品を拝見しましたが、かつて自分が撮影したことのある場所やお祭りの写真などが幾つもあり、懐かしい気持ちになりました。
 東北地方にはほかにはない多くの魅力があります。四季の変化の大きさ、自然の豊かさ、伝統行事やお祭り、習慣、風習などがいまも色濃く残っていることです。それが作品にも大いに反映されていました。これは他の地域のコンテストともっとも違うところではないでしょうか。このことをより意識されると、全国区でも作品が優位になると感じました。
 そして先の東日本大震災で甚大な被害を受けたことも無視できません。写真を撮ることは被写体について深く考えることだと常々思っています。だからこそ、いまだ終わっていないその問題を写真に残し、伝え続けることはとても重要で大切なことだと思います。
 東北写真サロンのますますの発展を願っております。

 最優秀賞「墨つけまつり」 木村 文武(宮城県多賀城市)

とても強い写真です。顔に墨をつけた二人の大人と男の子。誰もがいい表情をしています。さまざまなことを連想します。伝統、地域、愛情、そして世代を超えて受け継がれていくことについて。

 朝日新聞社賞「鼻」 小畑 一弘(岩手県一関市)

きれいにきまった一枚です。網戸の効果で、少女が絵画で描かれたように見えます。それでいて赤いワンピースにドキリとさせられます。3つの層の重なりが見事にひとつに結ばれました。

 全日本写真連盟賞「グラウンド整備」 海老名 和雄(宮城県仙台市)

震災で甚大な被害を受けた校舎が背景に写っています。そこに真っ白なユニフォームを来た女の子と男の子。大きなコントラストです。子供は未来の象徴です。そのことを何よりも強く感じます。

 アサヒカメラ賞「祭りの朝」 松村 喜一(福島県郡山市)

ご家族でしょうか。着物に紋付袴姿での記念写真です。こんな写真を拝見していると時間について考えずにはいられません。いまは過去の先端に過ぎないのだと。膨大な時間の蓄積を目撃した気持ちになります。

 県優秀賞・青森

「番屋の夜明」 福田 修逸(青森県蓬田村)
広角気味のレンズで空を大きく入れて撮っています。てらいのない写真ですが、それだけにここだけが持っている「場の力」を感じさせます。フラットな光の感じも見事です。

 県優秀賞・秋田

「双人っ子」 柴田 功記(秋田県秋田市)
同じくらいの年齢の女の子ですが、かなり対照的です。すでに女であることを意識しているような、それでいて寂しげな女の子の横で無邪気にかき氷をほおばる子。自然と二人の将来に思いを馳せます。

 県優秀賞・岩手

「いぶりがっこの里」 千葉 守保(岩手県金ケ崎町)
かなりの広角レンズで捉えています。真ん中の女性と炎に眼が行きますが、それは大根の迫力ゆえです。炎に染まった白と背後の黒とのコントラストがきまっています。

 県優秀賞・山形

「激突」 奥山 喜久雄(山形県新庄市)
かなりの迫力です。闘鶏の一場面だと思いますが、肉眼ではなかなか観ることのできない瞬間を捉えています。それだけに非現実的にも映るのです。背後の男性の表情が効いています。

 県優秀賞・宮城

「我が家」 佐藤 德文(宮城県利府町)
震災の被害にあった場所でしょう。さまざまなことを考えさせられる写真です。じっと見入ってしまいます。家にしては、少し小さい気がするから、余計にです。背後の家が効いています。

 県優秀賞・福島

「仲良し」 馬場 靖子(福島県大玉村)
気持ちが穏やかになる写真です。簡単には撮れません。写真は誰のためにあるかを気付かせてもくれます。二人の少女がいつか大人になったときのために、この写真は存在します。

全日本写真連盟からのお知らせ

総本部
19/4/26 初心者向け公式写真撮影ガイドブック 発売中
総本部
19/2/15 「全日写連」ルールについて
EPSON

English Information

2022/08/01
About The All-Japan Association of Photographic Societies
contact

〒104-8011
東京都中央区築地5-3-2
朝日新聞東京本社内 全日本写真連盟事務局
TEL:03-5540-7413