「第10回人間大好き!フォトコンテスト」の入賞作品97点が決まった。全国から491人、2477点の応募があり、全日本写真連盟会長で写真家の田沼武能さんが審査した。
【田沼さんの総評】
「人間よ、汝(なんじ)、ほほ笑みと涙との間の振り子よ」と詩人のバイロンは言ったが、私は人間は喜び、悲しみ、怒りなどのドラマを演じ、生涯を生きるのだと思っている。「人間大好き!フォトコンテスト」は、その人間のドラマの一瞬を捉えた感動の作品を募集し、10回目になる。
最優秀賞に輝いた「歓喜のフィニッシュ」は、マラソンのゴールに感極まって家族も一緒にゴールした瞬間を捉え、家族の最高の幸せの光景を写し取っている。朝日新聞社賞に選ばれた「こんにちは!!」は、ベルーガ(シロイルカ)と飼育員の愛情物語が感じ取れる。全日本写真連盟賞の「ともだち」は、笑顔の子どもたちの明るい表情がすばらしい。いずれの入賞作品も、生きる希望や夢、未来を表現したものが選ばれた。
近年のコンテストの応募作品は、カメラの性能がよくなり、技術的な失敗はなく、甲乙つけ難い作品が集まる。そこで違いが出るのは感性の良否によるところが大きい。撮影者が何に感動して写したのかが明確で、新しい発見のあるものが上位に選ばれる。前回の上位作品をまねたものは、被写体を発見した感動がないために賞から外れている。アイデアのひらめきも重要な要素になる。
今回、不本意にも賞を逃した方も、来年の応募に向けて頑張ってください。努力は必ず報われると私は信じています。
お父さんがマラソンでフィニッシュする瞬間に家族もいっしょになってゴールする。こんな状況はめったに起こることではない。まさに歓喜の瞬間であり、家族にとっては最高に幸せな瞬間である。最高の思い出になる写真でしょう。作者はそのチャンスを狙い、カメラポジションを選んだのだと思います。その狙いが最優秀賞をうんだのです。
飼育員とシロイルカのイベントの一シーンをとらえたものでしょう。観客席の上部から中望遠レンズで、ブルーの水の中で立ち泳ぎをする飼育員とシロイルカ。飼育員の顔にキス?をする瞬間を写している。なによりもブルーの水面に白いイルカが中央に写し込まれており、画面効果としても満点の作品です。
もちろんこれだけの子どもたちを乗せて走ることはないし、子ども自身がスクーターを走らせることはできない。作者の演出でしょう。演出写真であっても子どもたちの元気な表情が画面いっぱいに写し込まれている。そのわんぱく少年たちの自然な雰囲気が“人間大好き”“友だち大好き”を表現しています。
深川八幡宮の祭りは神楽に水をかけるので有名です。水をかけてもらい、家族全員が喜ぶ表情が素敵です。東京の下町の人たちの幸せの瞬間を写し撮っている。画面を覆う水しぶき、背景の雑踏も主役の家族たちを引き立たせる脇役になっています。
私は人生はドラマだと思っています。赤ちゃんの寝ているのもドラマの一シーンだと思います。赤ちゃんの表情がさわやかで素晴らしい。平和そのものの寝顔です。白いシーツや肌着にたいして、黄色いよだれかけ、ブルーのタオルがさわやかな表情をいっそう強く表現しており、赤ちゃんが神々しく見える寝顔です。