「現代をとる」をテーマに40回目を迎えた写真コンテスト「全日本写真展2012」(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、協賛:株式会社ニコンイメージングジャパン)の審査がこのほど朝日新聞東京本社で行われました。 応募状況は、一般の部では、472名/2,866点、高校生の部では488名/1,140点、総計960名/4,006点の作品が集まりました。 今年は、高校からの応募者が130名/220点余りの増加になりました。
【講評】
写真で伝え 写真で考える
東日本大震災から一年。一般の部では生きることや日々の暮らしの喜びを素直に撮ることで今日の世界を見せようとする作品が目立った。色彩豊かな、大きなサイズの写真も多く、印象が強かった。一方、見た目が美しい写真にすることを意識しすぎたせいか、写真からより深く「いま」を読み取らせようという試みはややおろそかになったのではないか。写真で何が語れるか考えながらカメラを向けていくことで、作品を見る人の思いを刺激してほしい。上位作品はさすがにその点を心得た視点で撮られている。
まさに現代を象徴する風景。私たちが生きている環境が吸い寄せられるような構図で見事に集約されて写っている。ゴミに悩まされながら、ゴミを捨てる側でもある私たち。面白さと不安が共存している貴重な場面だ。
「母校を訪ねて」 大野 登(埼玉県)
廃校となった母校を訪ねた郷愁だけでなく、魅力的な空間表現を成功させた。写っている人物の現在や未来を想像したくなる。
「イクメン修行中」 小林 郁子(神奈川県)
育児に積極的な子育てパパたちにするどく目をつけ、ほほえましい訓練風景を追った。時代を象徴する出来事を、さらに時間をかけて撮り続けてほしい。
「今風」 伊藤 邦郎(三重県)
対象の切り取り方が鮮やか。白い車に乗り込もうとしている網タイツの女性の足から、様々なことを想像させる。
「路地裏」 杉本 和彦(大阪府)
懐かしさに嬉しくなる子どもたちが遊ぶ姿。このような現代の瞬間もある、こんなにゆったりとした時間が流れている場所もある、という発見と、それを伝えようという撮影が素晴らしい。
「四代目誕生」 渡辺 正則(岡山県)
家族の会話が聞こえてきそうな、いまを生きる私たち皆のかけがえのない記念写真といえそうな場面だ。つい赤ちゃんに近寄って撮ってしまうところを、部屋の空間を生かした構図が巧み。